第44・46回生
東京オリンピック特別助成対象
●出場種目
8月6日│自転車トラック競技 女子マディソン
8月8日│自転車トラック競技 女子オムニアム
【インタビュアー:学術部門48回生 原野 新渚】
米国NY州にあるコロンビア大学で神経科学を専攻していて、今秋から3年生になります。現在夏休みの間は沖縄科学技術院大学で研究インターンを行っています。
ーー梶原さんの、「学業xスポーツ」の両方を妥協せずに突き詰めているところを特に尊敬しています。大学院の授業がオンラインになった際は全てのクラスでAを取ったというエピソードを拝見しました。しかしながら、どうしても1日の中で勉強→練習など、気持ちの切り替えをパッと行わなければならないけれど、気持ちや体がついていかない場面も多くあると思います(私自身も学業で切り替えを行うのに苦労することがあります)。限られた時間の中で学業とスポーツの両方で成果を出す為のセルフマネジメントで、何か心掛けていることはありますか?
梶原 : 大学に入学してからはトレーニングスケジュールや授業時間割などを自分で管理するようになりました。どのように時間を有効活用して計画通りに過ごすモチベーションを保てるかを考え、「未来日記」を考案しました。日記では、授業・課題・練習のメニューなど、未来の予定を1ヶ月先まで数分単位で全て考えます。そして、その30日先まで決まっているスケジュールには、当日を迎えるまで何度も修正を加えます。そのようにして作成した完璧な1日のスケジュールを、強い気持ちで実行するというものです。
さらにモチベーションを保つ為に、日記には、目標の日付に、目標を達成した自分に向けてメッセージも書きます。目標をより具体的にするために、「何分何秒の日本新記録で優勝できたね」など、勝った自分の姿を想像できるようにメッセージを送っていました。目標達成して気が抜けがちなときは、その日の日記の最後で次の目標に関して言及して、喝を入れるようにしました。今は未来日記は卒業して携帯のメモでトレーニング管理をしています。
この未来日記の発想は、母の子育て方針の影響だと思います。私の家族では毎年お年玉をもらうときに一年の抱負を家族の前で宣言する習慣があり、目標を口に出して努力を積み重ねることを小さい頃からしてきました。それが未来日記に繋がっているのではないでしょうか。また、一年くらい前から瞑想を取り入れています。呼吸に集中して気持ちを落ち着かせたり、考えていることや自分と向き合う時間を作っています。
ーーご自身が「頑張る」上で何が1番の原動力になっているか教えてください。例えば、大会でスタートラインに移動するときや、表彰台に上がっているとき、戦術以外でふと頭をよぎるのはどんなことですか?
梶原 : 未来日記で考えていたことを、当日はなぞるように実現できる高いモチベーションの高さも自分にはあると思いますが、やはり緊張感や不安感をかき消すのは日頃から応援してくださっている方の存在です。レース中、苦しくてピンチな場面でも、もう一段階自分を奮い立たせて追い込ませてくれるのはこれまで応援してくださった方々の顔が思い浮かぶからです。金メダルを取って、応援してくださった皆さんと笑顔で写真を撮りたいという気持ちが原動力になっています。
ーー東京オリンピックでは、ご自分のどのような部分に注目して欲しいですか?
梶原 : 私は選手にしては体が小さい方なのですが、その特徴と研究の成果を生かして、空気抵抗の少ない乗車姿勢で集団内で体力を温存しながら位置をとり、チャンスの場面で爆発的に飛び出す瞬間に注目してもらいたいです。
今は大学院でもオムニアム種目の1レースであるエリミネーションの戦術技能を統計学で研究しています。トップアスリートとして頭の中でレース中に考えている戦術技術を、ジュニアの選手が生かせるように教科書を作りたいです。また、メダルを獲得することで、よりたくさんの方に自転車競技を知ってもらい、競技人口を増やしたいと考えています。将来的には筑波大学の教授になって、研究を継続しながら未来のトップアスリートの育成に貢献していきたいです。
ーー最後にオリンピックでの目標を教えてください!
梶原 : 東京オリンピックでは女子オムニアム種目で金メダルを獲得できるように、精一杯頑張ります!
今回梶原さんと直接お話しする機会をいただき、日本人女子初の世界の頂点にまでたどり着くには努力はもちろんですが、それだけではなく、他の選手とは違う独創性と定量的なアプローチがあるからこそなのだと実感しました。研究・学業の両立や、次世代へ競技を伝えたい思いなど、研究・学術に通じるものがあると感じ今まで自分とは無縁だと思っていた自転車競技を身近に感じました。梶原さんと同じ江副記念リクルート財団の奨学生でいる事を誇りに思うと同時に、オリンピックで今までの練習の成果を120%発揮して金メダル獲得できるよう応援しています!
(取材日:2021年7月2日 文:学術部門 原野 新渚)
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