東 晟良
第45回生 東京オリンピック特別助成対象
●出場種目
7月25日│フェンシング女子フルーレ個人
7月29日│フェンシング女子フルーレ団体
【インタビュアー:アート部門49回生 大竹紗央】
シカゴ美術館付属美術大学在籍。主に実空間や仮想空間を用いたインスタレーションアートを制作しています。最近初めて周期ゼミを観察し、慣れ親しんだ日本のセミと鳴き声が違うのにも関わらず、セミのいる空間に身を置くと夏を感じることに感激しました。
ーーオリンピック開催についてさまざまな意見がある中で、どのようにオリンピックへのモチベーションを保ち続けましたか?
東 : テレビは毎日見ているので、オリンピックについてのニュースもたくさん見ています。でも、ニュースは日々変わります。オリンピックが開催されると信じて毎日フェンシングに取り組んでいました。
ーー一番辛い/しんどい練習は何ですか?そんな時、どのようなことを思い、考えると頑張れる/乗り越えられるのでしょうか?
東 : インターバルトレーニングでのダッシュ練習などもつらいですが、疲れが溜まっていても頑張り続けなければいけないときが精神的にも肉体的にも一番つらいです。自分だけで悩んでしまうと余計にネガティブになってさらに疲れてしまうので、コーチや家族になんでも打ち明けることがベストな方法だということに最近気がつきました。
フェンシング女子フルーレ日本代表チームのフランクコーチには、フェンシングの技術的な面だけではなく、メンタル面でもたくさん教わっています。フランクコーチが来る前の日本人選手は、試合中に相手からポイントを取ったときに静かにしていることが多かったのですが、コーチは「ポイントを取ったら声を出して自分を奮い立たせて気持ちを高ぶらせるんだ」と教えてくれました。これを実践してからは、試合中に気持ちを強く持ち続けることができるようになりました。
コロナ禍前の試合では、試合中に聞こえてくる声援に励まされて辛い状況を乗り越えられることがありました。例えば、ポイントを取ったときに大きな歓声が聞こえてくると、勝つぞという意欲がより強くなり、負けているときに「もっと頑張れ!」という声が聞こえてくると、その声に目覚めて自分の気持ちを奮い立たせることができます。
一方で、2020年の全日本選手権で初めて経験した無観客試合は自分が誰かに応援されているという実感が湧きづらく、ベンチにいるコーチと二人きりで戦っているようで少し寂しさを感じながら戦っていました。会場は選手の声が響くとき以外は静まりかえっていて不思議な感覚を覚えましたが、声援が聞こえない試合は選手にとって新鮮なものになるのではないかと思います。
ーー過酷なトレーニングで疲弊したご自身のメンタルを、支えたり癒してくれる趣味や好きなものはなんですか?
東 : 家にいることがすごく好きで、休日はぼーっとして過ごしたり、アメリカの映画やドラマや音楽を聞いてリラックスしています。去年のコロナ禍で時間ができたことをきっかけに妹の影響で韓国のドラマや音楽にもハマってます。試合前にもリラックスするために音楽を聴くことはありますが、姉と喋っていることのほうが多いです。試合前にひとりでいると考えすぎてしまうため、姉とフェンシングの話や、全く関係ない面白い話をすることで気がまぎれて、落ち着いた状態で試合に臨むことができます。姉はフェンシングではお互いを教え合う仲間でありライバルですが、私生活では「ザ・お姉ちゃん」で、よく怒られています…
ーーご自身の夢を追うにあたって一番の苦労はなんだと考えますか?
東 : 私の夢はオリンピックで金メダルをとることです。スポーツ選手は勝たないと注目されないし、たくさんの人に応援し続けてもらえないので、勝ち続けるというのが一番難しいことだと思っています。
ーー最後にオリンピックでの目標を教えてください!
東 : 東京オリンピックでの目標は、個人と団体でメダルを取ることです。2024年のパリオリンピックでは金メダルを取ることを目標にしています。オリンピックで剣を持って行う競技はフェンシングだけなので、剣の音や動きも魅力的だとは思いますが、激しい攻防を経てポイントが取れたときの喜びを選手みんながそれぞれ表現するので、そういうところも楽しんで応援してもらえたら嬉しいです!
東さんの失敗を恐れずに課題に取り組み続ける姿勢や、ポジティブに自分を奮い立たせる試みは、同じ江副記念リクルート財団の奨学生として見習いたい心構えだと感じました。東さんの言葉の端々には多くの壁を乗り越えてオリンピックへの出場権を掴んだということが込められているようで、話を聞いているこちらの胸が熱くなるようなインタビューでした。オリンピックという大舞台で緊張を感じつつも、相手からポイントを取ったときの喜びを全身で表現する東さんをテレビを通して応援できるのを心から楽しみにしています。
(取材日:2021年6月30日 文:アート部門 大竹 紗央)
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