オックスフォード大学に留学をしたのは、自分が学部生時代にアメリカに留学していた際に重点的に学習した有機合成化学だけではなく、その周辺の様々な分野についても広く学びながら研究をしたいと考えたことがきっかけでした。
「言うは易く行うは難し」という格言がありますが、これを本当に痛感させられ続けているのが私の留学生活です。後述するように新型コロナウイルスのパンデミックの影響も大きかったのですが、それ以前に複数の分野を同時並行的に習得するのは非常に難しい事業で、まだまだ学びきれていないことがとても多いと感じています。しかし、江副記念リクルート財団からご支援をいただいたことで、自分の目標に対して集中して取り組むことができる環境が整い、留学前と比較すれば信じられないほどの成長をすることができたと思っています。
江副記念リクルート財団から卒業した後も、しばらくの間は大学院生として実力を養ってから、次のステップに進んでゆきたいと考えています。まだまだ道半ばではありますので、初心を忘れずに今後も化学者として新しい知識やスキルを貪欲に吸収してゆきたいです。
専攻分野以外で、私が特に留学中に人として成長できたと思うことは、忍耐力と行動力がついたことだと思います。新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、思い通りにならないことや、ストレスが溜まってしまうことも多々ありました。個人の力ではどうしようもない理不尽な状況や、困難極まりない立場に置かれることは、コロナ禍という特殊な状況下では仕方のないことではありましたが、改めて今までを振り返ってみると、あらゆる面でものすごくキツかったというのが私の正直な生の感想です。
私は実験系の研究室に所属しているので、ロックダウン中はラボへのアクセスが絶たれるなど、苦しい日々が続きました。そんな状況でも留学を投げ出したりせずに、我慢強く出来る範囲での研究活動を続けてきたことで、忍耐力は以前よりも格段に高くなったと思います。そして、自分なりに打てる手を打ち、必死で生き残るための努力をしてきた自負もあります。
深夜から早朝までかけて指導教官に対するプレゼンテーションを作成して限られたラボでの研究時間の獲得に繋げたり、署名を一度は拒否された書類を徹底的に手直しの上で再提出して承認を貰ったりなど、厳しい環境下でも諦めたり投げ出したりせずにともかく前に向かって行動することでここまでの生き残りに繋げてきました。もちろん、パンデミック中もご支援を継続してくださった江副記念リクルート財団の皆様の支えがあってこそ、私も様々な手を打つことができたので、ここでも関係者の方々に深く感謝を述べたいと存じます。本当にありがとうございました。これからも、難しい状況に直面することもあるでしょうが、今までに支援してくださった方々の恩に報いるためにも、諦めることだけは絶対にしないと決意しています。
私はまだまだ未熟者ですので、自分の経験を誇ったり、どなたに対しても上から目線でものを言ったりは絶対にできない立場ですが、高い志を持った他の奨学生の方々にはぜひご自身の将来の無限の可能性を信じて挑戦を続けていって欲しいなと思います。