――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?
現在私は米国ボストンニューイングランド音楽院(修士課程)に通学し、東京音楽大学(アーティストディプロマコース)にも在籍しています。ボストンに住んで5年目、無事Bachelor Degreeを得て、この9月からMaster of Musicに進学しました。
全く偶然なのですが、私が幼い時にヴァイオリンの手解きを受けた先生から、現在師事している先生まで、米国で勉強された方ばかりで、私も米国で勉強したいと願ったのは自然なことなのかもしれません。
私が望んでやって来たボストン、私が望んで師事している先生方の下で、将来はクラシック音楽のソロでも室内楽でも、どんな要求にも完璧に応えられる演奏家になるため努力しています。また、生涯研鑽と勉強を怠らず、音楽も自分自身も日々アップデートしながら、常に新鮮な感動を届けることができる演奏家になりたいと思います。
夏休み初めてコンサートミストレスをしました
――日常生活、生活環境について
今学期、私は音楽院で、
“Entrepreneurial Musician” (どの様に音楽家としての自分の未来をクリエイティブにするかディスカッションする)、
“Improvisation for Non-majors”
(ジャズの基礎理論や和声などを学ぶと同時に実技にも挑戦する)、
“Mozart Viennese Operas”
(モーツァルトのウィーン時代のオペラの歴史)、
“Orchestra”
(Mahler:Symphony No.1)
(Erqing Wang:Labyrinth of Light)
“Studio lesson”
の講義と実技を取っています。米国では日本とは違い、ディスカッションやグループワークが多く、与えられたテーマをしっかりと研究し、確固とした自分の意見を持っていることが大切です。また、自分と異なる意見を持つ学生と議論し納得してもらえるよう説明したり、他者の意見をよく聞いて受け入れたり・・・ということが要求されます。
実技にしても、ただ達者に弾けるだけでは、先生にコテンパンにやり込められます。「作品の背景を説明出来る」こと、それと共に「自分なりの細かなアナリーゼが出来ている」こと、その上で「正しく演奏出来ること」が、実技を含む講義やパーソナルレッスンを受けるための最低条件です。
そして、アパートでひとり暮らしの私は、学校の講義やその準備の合間に買い物に行ったり、掃除や洗濯、料理をしたりして忙しくしています。私の住むアパートは、ヴァイオリンの練習も出来て学校も近く、ボストン交響楽団や公共図書館からもすぐの便利な場所にあります。昔ストラヴィンスキーが住んでいたそうで、とても素敵な歴史ある建物ですが、その古さからトラブルも多いのです。今年の長い夏休みを終えてボストンの部屋に帰ったら、お風呂の天井が豪快に崩落していて、あまりの驚きに腰が抜けました。そんなことに対応するのも日常です。
また現在、米国はインフレで物価が恐ろしいことになっていて、さらに円安も重なり、スーパーに行くと呆然としてしまいます(卵1パック650円、ミルク大ボトル1100円など)。日本から食料や日用品を多目に持ち込んだり、出かける時は飲み物やお弁当を持参したり、交通費を抑えひたすら歩いたりして節約に努めています。円に換算すると何もかもが昨年の2倍程の支払いとなっていますが、財団からのご支援と両親の支えで、厳しさに負けず元気に頑張っています。
――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること
日々とにかく学校の勉強をしっかりと行わないと、単位を認定してもらえません。宿題や自主的に調べなければならないこともとても多いです。米国の大学は勉学に対して大変厳格で、たとえ音楽大学であっても勉学と音楽活動は別々に考えられています。
しかし今の私には、コンサートで日本に帰国したり、コンクールに参加したりすることも重要です。そして、どうしてもまとまった日数欠席せざるを得なくなります。そんな時は先生に相談し、可能な限り欠席をカバーする特別課題を出して戴けるようお願いしたり、ズームで講義を受けられるようにして戴きます。実技が必要な講義に出席する時は、積極的に演奏を申し出たり、工夫をしながら勉学と練習、音楽活動を両立できるよう取り組んでいます。
――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負
今年9月、米国で行われたインディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールに参加しました。全力で挑み第3位とSpecial prize for the best performance of a “Mozart Concertoを受賞しました。
インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールにて(C)Denis Kelly
世界中の精鋭が目標とする権威ある国際コンクールで入賞できたこと、大変光栄ですが、満足しているわけではありません。さらに高みを目指し研鑽を続けていきたいと思っています。これからも国際的なコンクールやオーディションに挑戦し、演奏活動も行っていきたいと考えています。いつも全力で最善を尽くしながら、焦らず腰を据えて自分の道を見極め進みたいと思います。
コンクール入賞者で記念撮影(C)Denis Kelly