2024/06/19

エルガーのチェロ協奏曲を読売日本交響楽団と協演│読売日本交響楽団 第672回名曲シリーズ

2024/06/19

鳥羽咲音

鳥羽 咲音 Sakura Toba

2022年の10月からベルリン芸術大学の1年生として勉強を始めることができ、ヨーロッパの雰囲気と先生の門下生のエネルギッシュな雰囲気を毎日感じております。ドイツで学んだ事を日本の皆さまに聞いていただける事を楽しみにドイツ…

2024年5月31日、鳥羽咲音さんは、サントリーホールで読売日本交響楽団さんと「人生初のエルガーのチェロ協奏曲」を演奏されました。この協奏曲はドヴォルザークのチェロ協奏曲と双璧をなす、とプログラムに書いてありました。本当にすばらしい作品で、鳥羽さんもオケの方々と会話を交わしながら、この名曲を楽しんでいるようでした。

2022年10月から、ドイツにあるベルリン芸術大学に留学された鳥羽さんは、会う度にお話しをしなくても、充実した留学生活を楽しんでいることが一目見て分かるようです。留学生活に関する質問に対する回答には、どこの国にいても、どんな環境でも、すべてを吸収しようと目を輝かせている鳥羽さんが見えるようです。

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Q1 5月31日、読売交響楽団さんとサントリーホールで演奏されたのは、エルガーのチェロ協奏曲ホ短調作品85でした。人生初のエルガーとのことですが、エルガーはどのような作曲家でしょうか。

エルガーは威風堂々に代表されるようにイギリスのカラーが強い作曲家です。そしてこのエルガーのチェロ協奏曲は感情豊かで、英国的な響きと情熱が際立っていると思います。
エルガーが見て感じたイギリスの風景や歴史の流れなどがチェロのメロディからだけでもよく分かります。

2024年5月31日 読売日本交響楽団 第672回名曲シリーズ サントリーホールにて

Q2 この曲のどのようなところに惹かれていますか? 

エルガーのチェロ協奏曲は4楽章構成ですが個人的には1人の英雄の物語のように感じたり、また四季(春夏秋冬)を感じる時もあります。4楽章の終わりに近づくにつれて、最後の最後まで『人生』について訴え続けようとするメロディがたまらなく好きです。

Q3 この日の演奏にはどんな気持ちで臨まれ、終演後はどんな気持ちでしたか?また演奏中は何を考えていましたか?

まだまだこの曲の核心に迫っていけるという可能性を改めて感じました。正直今回演奏したエルガーでは10代(の私)と20代(の指揮者)が作り上げた若々しい演奏になってしまいましたが、これから何十年と弾き続けて深みのある音楽性を身につけられたらと思います。

指揮者のStephanie Childress 氏と

Q4 鳥羽さんが演奏する時、一番大事にしていることはどんなことでしょうか。

絶対に我を忘れないことです。今師事している先生の『Don‘t get excited. Create excitement』 というお言葉を大切にしています。本番では時々興奮し過ぎてしまい演奏が終わった後に自分がどういう演奏をしたのか全く思い出せない時があります。演奏中は常に冷静であるけれでも自分の中にある秘めたパッションをどのように皆様にお伝えできるのかを日々考えております。

演奏中は心の中は火のように燃えているが頭の中は氷のように冷めていなさいという大学の指揮者の先生のお言葉にも感銘を受けました。

Q5 ベルリン芸術大学に留学されてもうすぐ2年ですね。留学生活でご自分はどのように変わったと思いますか?

2022年に留学しましてから演奏面でも精神面でも鍛えられたと思います。ベルリン芸術大学で師事しているイエンス=ペーター・マインツ先生の多くの生徒さんはコンクールで優勝されていたり、ヨーロッパのオーケストラの首席チェリストをされたり、多方面に活躍されている方々ばかりです。

クラスメイトと会うたびに次のコンサートのお話や音楽の話題でいっぱいですし、ベルリンでコンサートに行く度に感動して圧倒される日々です。自身の新しい可能性に出会えることが楽しいですし変化していけることが有難いことだと思います。

2023年11月 エッセンフィルハーモニーにて
2024年5月25日 Prof. Maintz門下生のチェリストとベートーヴェンの9番を演奏しました。

Q6 今後どんなことに挑戦し、学んでいきたいと思っていますか?

今後は新しいレパートリーを増やしていきたいと思います。

また違う国から来た同年代の音楽家達とお話しするとこれほどにも違った発想や考えを持っていることにいつも刺激を受けます。音楽だけではなく政治や歴史も勉強しながら沢山のことを身につけていきたいと思います。

Q7 ベルリンを中心にパリやウィーン等いろいろなところに行かれていますが、様々な文化に直接触れ、何を感じていますか?

全て陸続きなのにも関わらず人間性や街並みの違いにはいつも驚きますが、同時に感銘を受けます。いつも五感をフル活用して旅行していますが、現地の人とコミュニケーションを取ってお話しすることが一番その国の文化を感じやすいです。

2023年6月 ウィーン楽友協会にて Mutter’s Virtuosi

Q8 これまでの留学生活で一番楽しかったことは何ですか?一番大変だったことは何でしょうか?

ベルリンでのありとあらゆる毎日の生活が楽しい時間です。1人で勇気を出して何かに立ち向かうこともその瞬間は緊張して不安になりますが、一歩踏み出すことによって、一歩踏み出さなかった自分と大きな差ができ、常に自分をレベルアップすることができます。

楽しい時間も大変な時間も「今」という時間は2度と戻ってきませんので自分が納得できるような「時間」をこれからも過ごしていきたいと思います。

1歳11か月 初めてヴァイオリンを手に取った時

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「ベルリンでのありとあらゆる毎日の生活が楽しい時間です」「一歩踏み出すことによって、一歩踏み出さなかった自分と大きな差ができる」という鳥羽さん。財団の奨学生を見ていると、海外留学することの測り知れない価値の大きさを改めて認識します。自分の専門分野の研鑽はもちろんのこと、異なる文化や価値観に触れ、視野が広がり、活躍の場が世界に広がる。まだ10代の鳥羽さんがこれからどれだけ成長していくのか。その可能性の大きさに期待が膨らみます。


読売日本交響楽団 第672回名曲シリーズ

日時:2024年05月31日 19:00
会場:サントリーホール

指揮:ステファニー・チルドレス
チェロ:鳥羽咲音
読売日本交響楽団

◆プログラム
シベリウス:交響詩『フィンランディア』 Op. 26
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 Op. 85
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op. 95 「新世界から」