2020/09/18

岸上 知志 活動レポート

2020/09/18

岸上知志

岸上 知志 Satoshi Kishigami

パーキンソン病や筋側索硬化症(ALS)などの難病に対する治療法開発に応用できる基盤技術の開発に挑んでいます。具体的には、医療現場において広く用いられるMRIに利用されている物理現象の核磁気共鳴(NMR)を用いて、病気の原…

――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?

私の将来の目標は、化学者として自分の専門知識を活かして有用な技術の開発に携わることです。オックスフォード大学化学科大学院に留学した理由は、学部で主に学んできた有機合成化学に加えて、その関連分野も幅広く学び、レベルの高い研究環境で自らの知識とスキルを磨きたいと思ったからです。オックスフォード大学化学科には世界トップクラスの研究者である教授の方々と最新の実験設備や優秀な技術スタッフが所属しており、自分の成長意欲と頑張り次第で夢のある研究を遂行するチャンスに恵まれています。

研究室メンバーの集合写真(左から二番目が筆者)

さらに、オックスフォードにはカレッジ制度があり、所属する学科以外の専攻の友人と交流し、異分野との出会いによって斬新な研究のアイディアを得る機会があります。実際に、私は同じカレッジの動物学者の友人と共同研究をスタートさせています。

Exeter Collegeに所属する大学院生が一堂に会した晩餐の際に中庭で撮影された集合写真(前から三列目の右から六人目が筆者)
 

日々の生活、生活環境は?

オックスフォードの街の周囲は自然環境に恵まれており、週末や平日の早朝には広大な芝生のグラウンドで友人と一緒にスポーツを楽しんだりランニングをしたりなど、研究の合間にリフレッシュできる機会も豊富にあります。私は、オックスフォード大学のアルティメットフリスビーチームの一員として活動し、ケンブリッジ大学との伝統の試合にも出場し、良い思い出を作ることができました。

出場したUltimate Frisbeeのオックスフォードvsケンブリッジ対抗戦での集合写真(左から三番目が筆者)

しかし、今春から英国での新型コロナウイルスの感染拡大が深刻となり、研究室に実験をしに行く時以外は、なるべく寮の自室で過ごすようにしています。本報告書の執筆時点では未だにコロナの感染は終息しておらず、冬に向けて第二波の懸念もあり、不安になることもありますが、感染防止のために細心の注意を払いつつ、私は英国に残って研究を継続したいと思っています。

合成化学実験室の様子
 

夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていることを教えてください!

長期的な計画を立てるのは重要ですが、個人的なモットーとして、それと同じくらいに今この瞬間に与えられているチャンスを大事にしてゆきたいと、私は思っています。英国での新型コロナウイルスの感染拡大に伴う都市封鎖により、数ヶ月間に渡って自粛生活をせざるを得なかった経験は、一ヶ月先や一年先に今と同じ日常が続いている保証は全くないということを、強烈な実体験として私に教えてくれました。コロナ禍の影響で苦労することもありますが、このような状況下でもオックスフォードで研究をやらせてもらえていることに心から感謝しています。先行き不透明な状況下でも、研究の大きなゴールを達成するために解決しなければならない目の前の一つ一つの小さな課題に対して、自分のベストを尽くして一歩一歩でも確実に進んでゆくことを意識しています。

 

最後に、これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負をどうぞ!

今後一年間の抱負は、言い訳をせずに結果にこだわって研究成果を出す、より具体的には第一著者として学術論文を出版する、そのために出来る最大限の努力をする、ということに尽きます。私はまだ学生の立場なので、人生の次のステージでのチャンスを掴むためには、現在置かれた環境で目に見える業績を残す必要があります。そのために、留学生という自分の立場をわきまえて、コロナの感染対策に関する英国内や大学内のルールを遵守しつつ、オックスフォードに留まって研究を続けたいと考えています。未熟な自分を支援してくださっている江副記念リクルート財団の皆様と、与えられた素晴らしい研究環境に対する感謝を忘れずに、困難を言い訳にせずにむしろ楽しむくらいの気持ちで、コロナに負けない強い意志を持って、研究を進めてゆきたいと思っています。