コンサート情報 CONCERT INFORMATION
リクルートスカラシップコンサート
江副記念リクルート財団では、器楽部門の奨学生全員が年に一度集まり、それまでの研鑽の成果を披露する場として、リクルートスカラシップコンサートを例年12月に開催しています。このコンサートは1995年から続いており、毎年高い評価をいただいています。
器楽部門の奨学生は、弦楽器とピアノを専攻する学生たちで、普段はヨーロッパやアメリカの留学先で勉強を続けながら、コンサート活動を行っています。全員がソリスト級の演奏家であり、今後のクラシック界を担う実力者たちです。
そのような奨学生が一堂に会するリクルートスカラシップコンサートは、お客様にとっても出演者にとっても非常に貴重な機会であり、世界に挑戦し、すば抜けた活躍をしそうな才能ある若い音楽家を世に紹介する場ともなっています。
第30回リクルートスカラシップコンサート 開催のお知らせ
2024/06/21
器楽部門現役奨学生が一堂に会し、国内外での演奏会や練習等、この1年間研鑽を積んだ成果を披露するコンサートです。 若き精鋭たちの演奏を楽しみに、毎年たくさんのお客様にお越しいただいています。
開催概要
日付:2024年12月21日(土)
時間:13:00開演 ※12:15開場 (17:30終演予定)
会場:紀尾井ホール
出演者
ヴァイオリン:MINAMI、辻彩奈、外村理紗、戸澤采紀、前田妃奈、服部百音、HIMARI
チェロ:鳥羽咲音、北村陽、佐藤晴真、柴田花音
ピアノ:亀井聖矢、吉見友貴、牛田智大、重森光太郎、進藤実優、谷昂登
ヴィオラ:石田紗樹(特別出演)、鈴木慧悟(特別出演)、田原綾子(特別出演)
チケット
発売日:2024年 8月2日(金)10:00
◆ホールチケット:S 席7,000 円 A席4,000円 学生席2,000円(全席指定)
◆オンライン視聴チケット:1,500 円
※出演者、曲目等はやむをえない事情で変更になる場合もあります。
※学生席は入場時に学生証の提示が必要です。
※未就学児童の入場はご遠慮ください。
プログラム
※曲目をクリックいただきますと曲目解説をご覧いただけます。
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モーツァルト/ピアノ四重奏曲 第2番 変ホ長調 KV493
戸澤采紀(Vn.)、石田紗樹(Vla.)、鳥羽咲音(Vc.)、重森光太郎(Pf.) -
1756年1月27日ザルツブルクにて生を受けたオーストリアの作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、35年のその余りにも短すぎる生涯のうちに数多くの傑作を生み出した。優れた作曲家、ヴァイオリン奏者だった父レオポルトは、傑出した才能を持つ息子に英才教育を施し、5歳には作曲を始め、6歳には演奏旅行を行った音楽史上最大の神童アマデウスを育て上げた。
ピアノ四重奏曲第2番は、代表作の歌劇「フィガロの結婚」と同時期にウィーンにて作曲されたモーツァルト30歳の作品。モーツァルトは2曲のピアノ四重奏曲を遺しているが、小型のピアノ協奏曲とも呼ばれるようにいずれもピアノが主体的に書かれている。第2番は、弦楽器群とピアノとの掛け合いとピアノの軽やかなパッセージが魅力的な第1楽章、ヴァイオリンを中心とした弦楽器が美しい旋律を奏でる第2楽章、可憐で遊び心に満ちた第3楽章から成る優美な作品。(阪田知樹)
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メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 作品49
前田妃奈(Vn.)、佐藤晴真(Vc.)、牛田智大(Pf.) -
当時モーツァルト以来の神童とも呼ばれたメンデルスゾーンは、わずか10代後半で彼の代表曲でもある弦楽八重奏や序曲『真夏の夜の夢』を書き上げるなど、周囲を驚かせるほど早熟な作曲家であった。興味深いことに、実は音楽に限らず、水彩画の分野でも才能を発揮しており、今でも彼の描いた風景画は多数残っている。また、メンデルスゾーンは、生前バロック音楽の研究に力を注ぎ、当時忘れ去られていたJ.S.バッハの『マタイ受難曲』を蘇演したことにより、バッハという作曲家を世の中に広めた功績者としても知られている。
このピアノ三重奏曲第一番 作品49は、彼が円熟期を迎える頃に書かれており、古典派の形式美とロマン派の表現力が見事に融合している。ソナタ形式である第一楽章は、緊張感と哀感に満ちた第一主題と、甘美でたおやかな第二主題が高まり合い発展していく。憧れと苦悩が詰まった『無言歌』のような第二楽章、そして煌びやかで軽妙な第三楽章がその後続き、最後は情熱的で緊迫感のある、ロンド形式の四楽章で全曲を締めくくる。(岡本侑也)
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シューマン/ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47
MINAMI(Vn.)、田原綾子(Vla.)、北村 陽(Vc.)、谷 昂登(Pf.) -
ドイツの作曲家ロベルト・シューマンは、書店と出版業を営む父アウグストとその妻ヨハンナの第6子として1810年6月8日ツヴィッカウに生まれた。7歳からピアノのレッスンを受け始めたロベルトは、同じ頃に作曲を始めたとされている。音楽に情熱を注いでいった少年シューマンは、わずか12歳で学生オーケストラを設立し、10代半ばからは地元で著名なピアニストとして活発な演奏活動を展開していった。シューマンにとってピアノという楽器は極めて重要で、22歳で右手を痛めて演奏を断念したのちも多くのピアノ曲を作曲した。
1842年にハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を研究したシューマンは、3つの弦楽四重奏曲を作曲し、その後ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲と重要な室内楽作品を次々と完成させている。ピアノ四重奏曲がモーツァルトのそれと同じ調性であることは偶然ではないように思われる。コラール風の序奏で始まる第1楽章は、快活さと優しさが同居した楽章。第2楽章は2つのトリオを伴った妖しげな「スケルツォ」。チェロが奏でる旋律が心に沁みる美しい第3楽章は、本作の白眉といえよう。対位法的展開が顕著な第4楽章は、「フィナーレ」に相応しい華やかさで楽曲を締めくくる。(阪田知樹)
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ショスタコーヴィチ/ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57
服部百音(1st Vn.)、辻彩奈(2nd Vn.)、鈴木慧悟(Vla.)、柴田花音(Vc.)、吉見友貴(Pf.) -
ショスタコーヴィチは20世紀を代表する、ソビエト連邦出身の作曲家である。第一回ショパン国際コンクールで特別賞を受賞するなど、卓越したピアニストでもあり、自作自演の貴重な録音も幾つか残っている。当時、スターリン体制への忠誠を芸術分野でも示すよう圧力がかかっており、前衛的な作品を発表していたショスタコーヴィチは当局から痛烈な批判を受けることがあった。それにより幾度か命の危険にさらされることもあったが、その度に体制を賛美する新作を生み出し、状況を切り抜けて名誉を挽回した。
このピアノ五重奏曲は、彼の代表曲でもある交響曲第5番の初演後程なくして作曲され、国家最高の栄誉であるスターリン賞を受賞している。全体は5楽章から成り,第一楽章プレリュード、第二楽章フーガ、第三楽章スケルツォ、第四楽章インテルメッツォ、第五楽章フィナーレ、と組曲的な構成となっている。厳粛な雰囲気の中にも深みのある情感を持つ、名作である。(岡本侑也)
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ラフマニノフ/2台ピアノのための組曲 第2番 作品17
亀井聖矢(1st Pf.)、進藤実優(2nd Pf.) -
1873年3月20日(現在用いられている新暦では4月1日)ロシアのノヴゴロド州で貴族の血を引く上級将校の父ヴァシーリィとその妻リューボフィの間にセルゲイ・ラフマニノフは生まれた。祖父がピアノ演奏だけでなく作曲も行なった優れたアマチュア音楽家だった影響もあり、ラフマニノフは幼い頃から音楽に囲まれた環境で育った。モスクワ音楽院にてピアノ科と作曲科を最優秀の成績で卒業したラフマニノフは、一流の作曲家としてだけでなく、一流のピアニストとしてもその名を広く知られていく。
1900年に作曲され、翌年の冬に初演された2台ピアノのための組曲第2番は、演奏会でも取り上げられる機会の多い楽曲。彼の代表作ともいえるピアノ協奏曲第2番と同時期に作曲されたため、類似点も認められる。組曲第2番は、ピアノの名手だったラフマニノフの楽曲らしく、第1ピアノと第2ピアノのどちらもピアニスティックな魅力に満ちている。「序奏」と題された第1楽章は、勇壮な行進曲。第2楽章は、作曲者が尊敬していたチャイコフスキーのバレエ音楽を想像させるような流麗な「ワルツ」。少し東洋的な雰囲気を持つ第3楽章「ロマンス」は、ピアノ協奏曲第2番の第2楽章を思わせる。あるイタリアの歌を主要な旋律として用いている第4楽章「タランテラ」は、低音から高音までピアノの鍵盤を終始駆け巡り、鐘のような重厚な和音でダイナミックに作品の幕を閉じる。(阪田知樹)
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メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20
1st Quartet:辻彩奈(1st Vn.)、戸澤采紀(2nd Vn.)、鈴木慧悟(Vla.)、佐藤晴真(Vc.)
2nd Quartet:外村理紗(1st Vn.)、HIMARI(2nd Vn.)、石田紗樹(Vla.)、鳥羽咲音(Vc.) -
この弦楽八重奏曲は、メンデルスゾーンがわずか16歳の時に作曲された。彼の友人でありヴァイオリンの先生でもあった、エドゥアルト・リーツの誕生日にお祝いとして贈られたのだが、少年から青年へと成長途中の人物が書いたとは思えない、見事な完成度の作品である。当時、主な室内楽の編成と言えば、ピアノ三重奏や弦楽四重奏であったため、弦楽八重奏という形態はとても革新的であった。この曲は4つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、2つのチェロで演奏される。
第一楽章は、若々しいエネルギーと生命力に溢れ、正に青春を象徴するような曲想。第二楽章は、ハ短調という嘆きの調整ではあるが、シチリアーノ風とも言えるリズムの主題で、どこか優しい、慰めの表情がある。文豪ゲーテの『ファウスト』の一節よりインスパイアされた三楽章は、楽章を通して、最初から最後まで常にピアニッシモで演奏される。まるで妖精が踊っているかのような、軽やかな楽章。第四楽章は、無窮動的なテーマで始まるフーガである。華やかで目まぐるしく曲が展開し、全曲を締める。(岡本侑也)
監修 伊藤 恵 / 曲目解説 阪田知樹(43回生)、岡本侑也(42回生)
主催・お問い合わせ
公益財団法人江副記念リクルート財団
info@recruit-foundation.org