1年半に渡って海外生活の支援を江副記念リクルート財団にしていただきました。今年度はイギリスではなく日本からの大学生活となってしまいましたが、とりわけ最初の1年間のイギリス生活は本当に自分の人生の中でも重要な期間となりました。
まず、最大の出来事はイギリスの民放BBCでテレビ映画作品を制作したことでした。初めて英語で公募に応募して何度も面接を経て採用され、唯一のアジア人(というよりは唯一の非イギリス人)の監督として参加できたことは大きな経験となりました。この映画がきっかけで、現地のスタッフたちとも出会うことができて、さらに自分自身の制作をする上で大きな進歩となりました。
その次に大きな出来事となったことは、そのBBCで映画を制作した半年後に、ルイヴィトンから映像制作の依頼を頂いたことでした。世界的に大きな企業との、大きな予算で映像を作ったことは、制作をする上での視野を広げてくれる貴重な体験となりました。そして同時に、こうした企業との仕事が、学生生活の中で抱えていた借金の返済にも多少繋がりました。
それだけでなく、若手現代美術作家の登竜門と言われているNew Comtemporaryというアート賞にも入選したり、十代からの夢であったロッテルダム国際映画祭に初長編映画が入選したりと、大学生活はもちろんのこと、それだけでなく大学外での活動に力を入れたことが、今後の自分の人生に大きく影響しているように思います。
学費や生活費をすべて自分で支払ってきた中、もし江副記念リクルート財団の奨学金を頂いていなかったら海外留学という途方もなく費用のかかることも実現することはありませんでした。奨学金をいただけたことで、海外留学が現実のものとなり、そしてそのおかげで、様々な想像も出来なかったチャンスを手に入れることができました。
いまは日本・北九州で制作をしながら生活をしていますが、状況が落ち着いたらまたイギリスに戻ることも考えています。これからどうなるかわかりませんが、よく働き、よく学び、よく考え、そして頂いたこの素晴らしい機会をずっと胸に、江副記念リクルート財団の奨学生として胸をはれるように、今後もがんばって作品制作に励みたいと思います。