2021/04/12

阪田知樹 卒業レポート

2021/04/12

阪田知樹

阪田 知樹 Tomoki Sakata

ピアノ演奏の黄金時代は、ショパン、リストらの活躍した、所謂「ロマン派」の時代から築かれ、発展し、戦前戦後にその頂点を迎えました。 作曲家でありながら、名ピアニストでもあった「コンポーザー・ピアニスト」と呼ばれる音楽家たち…

2014年より江副記念リクルート財団に御支援頂くこととなり、欧州に拠点を持ち、ドイツの音楽大学にて研鑽を積むということが実現しました。

ドイツ・ハノーファーでの充実したレッスンの数々は勿論のこと、座学の講義では、これまで日本の大学でも課されている音楽関係の講義だけでなく、音楽家の為のマネージメント/マーケティング講座や、音楽家の為の身体学などといった、音楽そのものだけではない側面から今後音楽と共に生活していく上で必要なものを学ばせて頂き、非常に貴重な体験をさせて頂いております。

自身の音楽をより深めるには大学での勉強だけではなく、様々な努力をして参りました。近隣での演奏会を聴きにふと足を運んだり、一つの楽曲を勉強するために作曲家/作品についての文献を原語で読んだり、作品に纏わる詩/小説/絵画等に直接ふれたり、また何種類もの楽譜(ヨーロッパでしか手に入らない資料を含む)をも見比べて研究したり、各地の講習会などにも参加し、様々な音楽家の方々からアドバイスを頂いたりといった欧州滞在ならではの充実した研鑽の日々を過ごすことが出来たのは、御支援があったからこそです。

また、ヨーロッパ、アメリカをはじめとする世界の色々な土地で演奏させて頂くきっかけとなったコンクール等に参加することが出来たのも、貴財団のサポートがあってのことでした。
2020年は(現在もですが…)コロナ禍もあり、予定されていた由緒あるドイツの音楽祭へのデビューなどがキャンセルになってしまったりと悲しいニュースも少なからず続きましたが、日本は諸外国と比べると演奏機会には恵まれているほうだと感じますし、少しずつ演奏会のある生活も戻りつつありますので、世界に降りかかっている災いに屈せず今出来ることを探して頑張っております。少しずつ自分の目標や夢に近づけるように日々、精進、研究を怠らないように自分を律したいと思います。

今後は引き続き、演奏に磨きをかけること…なかなか自由に移動してレッスン等を受けられないのが歯痒いですが、そして、レパートリーを拡充していくことに力をかけたいと思っております。また作曲の分野でも今まで認めてきたスケッチ(室内楽作品とピアノソロ作品)を形にしていく予定です。

2020年はコロナ禍を受けて、3月から7月まで公開の場での演奏が全く無くなってしまいました。8月になってようやく延期開催された演奏会に戻ってきて実際に演奏した時には、これほどまで常日頃ホールで貴重な時間を過ごさせて頂いていたのかと改めて感じ、この感覚を失ってはいけないと思いました。今後の演奏会ではその気持ちをより大切に、ひとつひとつの演奏に向き合っていきたいと固く誓いました。

昨年の様々な環境の変化により、演奏に対する気持ちの変化も出てきましたが、それは私自身の内面にも変化があったのかもしれないと感じております。

元来マイペースな性格ではありましたが、様々な葛藤があった中でも近い将来状態が改善されるだろうと朧げに思いながら、深く考えず、今取り組みたいことに向き合い、根拠なく肯定的に過ごしておりました。今後も人生には音楽家としてだけでなく人間として色々な困難が待っているだろうと思うと実はこれは極めて大切な素質なのかもしれません。怪我の巧妙とでも申しましょうか、特にこの一年はかなり鍛えられたと自覚するほどです。
自分が目指す目標をしっかりと見据えて、目の前にある課されたものに対し真摯に取り組んでいく、「木を見て森を見る」ことが何においても息の長い活動をするのには必要なことなのかなと思います。私もまだまだ勉強中の身ですが、これから勉強していこうと思われている方に送ることのできるメッセージはこれに尽きるように思います。私自身も肝に銘じこれからも頑張って参りたいと思います。

最後になりましたが、改めてこれまでの多大なるご支援に心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。