江副記念リクルート財団様には5年間お世話になりました。
僕にとっての当初からの目標はとにかく演奏家としての活動ができるようになることでした。それはソリストとしての演奏機会があまりなかった僕にとっては、当たり前のようでいてとても大きな壁でした。
元々僕はコンクール独特の空気感が得意ではなかったので、それ以外での方法で活動の基盤を作る方法がないか模索していたのですが、その考え方が甘かったことを江副記念リクルート財団様に気付かせていただきました。2017年度から2018年度は奨学金なしでの留学生活となっていたのですが、この2年間は演奏家としての成長と共に、僕の中での覚悟が決まった必要不可欠な期間だったと思います。
その後国際コンクールでの積極的な挑戦によって様々なレパートリーや身体のケアの仕方を学び、入賞を機に音楽事務所への所属に繋がったことで、僕が望んでいた目標をようやく達成することができ、初めて演奏家としての新たなスタート地点に立つことができました。
同じ奨学生として世界中で活躍される音楽仲間の存在がいつも大変な刺激となり、自分を鼓舞して成長してこれたことは大きな財産であり、温かく時に厳しくご支援いただいた江副記念リクルート財団様には感謝してもしきれません。
ピアニストは楽器の特性上1人で完結してしまう場面が多いのですが、近年の活動をしながら色々な方々とご一緒させていただく中で、些細なことでも連絡ひとつ入れることだったり、お礼などのさりげない気遣いが、コミュニケーションをより豊かにし、結果的に仕事をより充実させる環境になるということを学んでいます。音楽を通じた職業ではありますが、人と人との繋がりの中で日々助け合いながら生きているという、社会人としての基本的な学びができたこともとても大切なことだと思いました。
後輩へのメッセージということで、もはや年齢差など関係なく才能豊かな奨学生たちですので、それぞれが進むべき道を歩んでいくのだと思いますが、スポットライトがあたるが故に日々の感謝の気持ちや謙虚でいることを忘れずに、何より体調管理に気をつけて頑張って欲しいと思います。また演奏会の機会でご一緒できるのを楽しみにしています!
今後の計画としては日本での演奏活動と並行して引き続き海外での研鑽を積んでいきたいと思っています。作曲家や作品の背景などをより勉強しながら、どんなプログラムの組み方ができるかといった可能性についてより検討してみたいなと思っており、それらに必要なレパートリーを沢山広げていきたいと思います。
そして卒業生の名に恥じぬよう、今後も変わらず精進して参ります。5年間ご支援いただき本当にありがとうございました。
小林海都