2024/08/04

2024/7/10「海外美術大学留学と制作について」小林颯個展 × リクルート財団 トークイベント 開催報告

2024/08/04

小林 :めっちゃ興味本位なんですけど、オープンコールはどうやって探してますか。

大竹 :オープンコールは、人づてに聞いたりとかで、学校の先生とかもフルで働いてる先生とかになると、結構ニューヨークで活躍してアーティストとして成功されてる先生がすごく多くて。そういう先生のところに行って、ゴマすりじゃないけど、ちょっと情報くれよみたいなことを言うと、くれたりとかして。アメリカって結構ネットワーキングの世界で、日常的に友達と仲良くして、自分の興味を知ってもらうと、 友達が情報をくれたりすることが多くて。「そういえば、今度ここでこういう風な公共アートの機会があるんだけど、あなたの展示してみたら」とか。それでいいかもって思っていざ調べたら、大抵のオープンコールは学生ダメなんですよね。 学生は受け付けてなくて、学校を卒業したプロのアーティストをとる場合が多いんですけど、でもその中でも学生を受け入れてるところもあったりして、そういうのを見つけてリストにして、そのアプリケーションが開いたら応募するみたいな感じをしてました。 逆にどうやってオープンコールを探してますか。

小林 :そうですね、自分はインスタをフォローしてて、あるんですよ、色々。アートエンダとかは有名かな。あとはFully Funded Residencies。これはフルに全額助成みたいな限定のレジデンスが記載されてるやつ。最近気になってたのはAIR EU。これは日本語で書かれてて、レジデンスの情報が結構たくさん載ってて、自分も使っていこうって感じのサイトですね。

中岡 :国によってsnsの土壌が違うなって。ベルリンって割とインスタですよね。台湾はフェイスブックでインスタが全然見えてこない。他の国もそれぞれ違うのかなって。どうですか。ニューヨークとか。

大竹 :ニューヨークはinstgramが多いのかなって思う。アメリカはインスタが多い。あとはギャラリーとかのレセプション、初日に行われるパーティーみたいなのがあって、そこに行く。そこに来る人ってアート業界に繋がってる人が多いので、その人たちから情報をもらうみたいなのも多いかもしれない。なんか人づてと instagramの両方かなって。どうですか。イギリス、ロンドン。

上野 :ロンドンは学生とか卒業したばかりの新しいアーティストとかだと、ロンドン芸術大学だったら、ロンドン芸術大学のメーリングリストみたいなのがあって、常時オープンコールだったりとか働く場所 を随時メールしてくれるっていうのがあって。大学にもよるんですけど、その学部内でこういうオープンコールやってるよっていうinstagramアカウントがあったりとか。

大竹 :情報は常に共有されてる感じですよね。オープンソースというか。

小林 :今思ったのは、大竹さんと中岡さんは今は学生だけれど、自分と上野さんは修了してますね。

上野 :そうですね。

小林 :どれくらい前に修了されたんですか。

上野 :去年の夏です。私はもう大学院の時点で大学の非常勤で働いてたので、それを続けるっていうのと、あとはフリーランスで。私のプロジェクトが、テキスタイルと数学だったり科学だったり、アーティストとかデザイナーとか、クリエイティブの人たちとコラボレーションするときもあるんですけど、それ以外にも、例えばシェフだったりとか、私は食べ物に興味があるので、科学系の研究の方だったりとか、色々ですね。

小林 :純粋にご自身を象徴する制作ってありますか。みたいな質問をしちゃうんですけど。

上野 :最近なかなか更新してないんですけど、今もまだ集めてるリサーチ途中の作品で、道に落ちてる食べ物を、実際に拾うことはできないので、写真に収めて撮るっていうのを2018年から始めて。じゃあその関係ってなんなんだろうっていうのをリサーチし始めて、それが最終的に大学院での卒業作品っていうことになったんですけど、 その関係を掘り下げていく中でどうやって理解していくかっていう時に、じゃあinstagramで聞けばいいじゃないっていうので、オンラインをリサーチの箱として使っていったってんですね。そのリサーチが最終的に参加型パフォーマンスっていう形になって。道に落ちてる食べ物を、また再び人に取り込んでみたらどうだろうっていう、そういうサイクルがあったら面白いよねっていう。落ちてるけどやっぱり食べ物は食べ物だし、食べ物ってなんだろうっていうのが問いなんですけど、それをテキスタイルと数学で掘り下げていったっていう作品です。

小林 :数学はどの要素ですか。

上野 :私は数学者ではないので、100の理解っていうのは難しいので、テキスタイルを道具として使用する上で、ガイドのような形で数学のセオリーを使うんですね。私的にアートっていうフィールドがそんなに心地いいものではなくて、っていうのも私のバックグラウンドがテキスタイルデザインで。デザインだとプロブレムソリューション/問題解決っていうのがきっちりあって、じゃあ私の問題はどうやってテキスタイルで解けるのかってなった時に、数学に聞けば答えが返ってくるかもしれないっていうので、数学を使い始めたんです。この作品はグラフ理論と資源数を使って、デジタルの中に入ってるものを実際に取り出すっていうセオリーです。なので私が実際落ちてるものをinstagramに入れて、そのリサーチした中に入ったものをどうやって取り出すか、 というのを解いたのがこれです。ごちゃごちゃしてるけど、私はシンプルなものを作るのが苦手なので複雑なのが好きですね。

小林 :これは例えば、クリット/講評みたいな場でどういうフィードバックがされるんですか。

上野 :フィードバックは本当に色々で、っていうのも、 みんながみんなテキスタイルを勉強したわけでもないし数学を勉強したわけでもないので、それは個人個人になるんですけど、理解してくれる方もいますし、理解してくれない方もいます。面白かったのが、たまたまクリットの時に何かの訪問でフランスから物理学者の方がいらした時に、私が数学を使ってることは何も言わずにこのパフォーマンスをしたんですね、最後に私が数学のこういう理論を使ってこうこうこうなって、って言ってたら、なんか議論がはじまって、大竹さんがさっき言ってたように、やっぱ言語が違うんでお互い理解するのが難しくて結構言い争いになってしまって、「もう僕は理解できないし、 君は誰なんだ」みたいなことを言い始めたので、「私はニッターで編み作家で、こういうことをやっていて最終的に行き着いたのがinstagramで、デジタルから取り出すことをやってるんだ」て言ったら、「それはすごい考えだ。だけど僕は答えを知らない」って言われて、その答えを科学者に結構求めてたんですけど、その彼にも知らないって言われたので、じゃあどこに解いていこうかなっていうのが今の課題ですね。

小林:なるほどなるほど。上野さんと大竹さんのいらっしゃる学校は、なんとなく似てるけど目指してる方向性は違いそうだなと感じました。修了生とかで自分が好きな人っていますか。気になるとか。

大竹 :ダニエルロジンDaniel Rozin。やっぱりレジェンドだなって思って。うちの学校ってテクノロジーとアートの掛け合わせなのでテックのオタクが多いんですよね。マイクロコントローラーとか基盤とかが露出した作品を作る人が多いんですけど、でもダニエルロジンはそういうハードなものをどうやって美しく見せるのかみたいなのがすごく上手だなって思って。本人もすごくチャーミングなおじいちゃんで。そういう風な彼のチャーミングさが作品にも出ていて、作品と個人がどこかで繋がってるような感じをテクノロジーを使いながらも作れるのって最高にいいなって思って憧れますし。彼もうちのITPのだいぶ昔の卒業生です。

中岡 :結構歴史が長い学科ですか。

大竹 :と言っても40年~50年ぐらいで、1番最初に作られたのが、それこそArduinoの創設者の一人のトムアイゴTom Igoeさんっていう人がアートアンドテクノロジーってあってもいいんじゃねってなってニューヨーク大学と協力して作ったのが始まりだと聞いてます。元々そのITPって大学院だけの学校だったのが、4,5年前にIMAっていう4年間の学部も創設されて、IMAはまだ人が少ないんですけど。メディアとニューメディアのアーティストたちが作り出した学校なので、歴史的にはちょっとまだ浅いのかなっていう風に思います。

小林 :中岡さんは好きな修了生とか気になってる修了生とか近い人とかいますか。 学科内じゃなくてもいいです。なんならベルリンでもいい。

中岡 :私は最近気づいたんですけど、あんまりサウンドアーティストに影響を受けてないかもしれない。 

なのですごい心が動いた作品は違う分野の作品が多くて。自分の中の影響を受けた作品の中に音の作品がそんなにないのが現状問題。 よく講評とかでリファレンスはどういう作品ですかって聞かれた時にそういうのを自分で見渡すと音の作品からそんなにインスピレーションを受けてないかもなって。

小林 :逆にインスピレーションを受けてる制作とか作家って誰ですか。

中岡 :最近はアピチャッポン。映像が多いですね。映像と演劇とかがすごく多い。

小林:アピチャッポンの何が1番?

中岡:最近見たのは「太陽との対話」をドイツの世界演劇祭で。それがすごくいい体験で、VR作なんですけど、ここで私が感じたのがまた他者性だなと思って。2部に分かれるんです、自分が入った時にはVRゴーグルをしてる人たちがいて、最初にゴーグルをしている人たちはゴーグルをしてる人たち同士は見えるけれど、ゴーグルをしていない後半グループの人たちのことは見えないので、ぶつからないように避けてくださいって説明が入る。それは優しさで成り立っている作品だなと思って。実際自分もゴーグルをつけたら、次に入ってくる人たちのことは見えなくて、なんとなく避けられてる感覚があって。見えないけど介護されてるみたいな感じがあって、その繰り返しっていうのが役を受け渡しあってる感じがあって、今もずっと心に残ってる。

小林 :なんかだいぶ演劇的というか、演劇を感じますね。

中岡 :はい、すごく参加させられる作品なのでやっぱり演劇的だなと思います。



小林 :なるほどなるほど、そっか。時間も迫ってきているんですが、逆に上野さんは先ほどのこの2方以外で頭をよぎった人っていますか。アートアンドサイエンスでもいいですし、自分の制作とか今まで話してみてとか。

上野 :チェコの方なんですけど、ヤン・シュヴァンクマイエル Jan Švankmajerってわかりますか。

小林:はい、わかります。

上野 :彼の作品が好きで、大学院の卒論の事例にしたんですけど。彼の面白いところは、映画監督って書いてあるんですけど、 彼自身は「僕は映画監督じゃない」って言い張ってるじゃないですか。マテリアルとその触感をリサーチした彼の本があって、それはすごく科学的な根拠が背景にあってすごく面白い本で。 私は全然映画とか作らないんですけど、そういう部分、触感ってテキスタイルの視点と似てるなっていうので、彼の作品を事例にしたんです。すごく影響を受けてますね。どうやって触感と向き合っていくか。今デジタルがすごい取り上げられてるけどテキスタイルってスクリーン上ではやっぱり100パーセント伝えることができないって思ってて、作品にもよると思うんですけど、なのでその中で、 実際に触れるってなんだろうみたいなのが問いです。苗字を忘れちゃったんですけど、ロレイン Lorraineさんっていう、色々見つけた骨だったりとかすごく民族的なものを組み合わせて、人形たコラージュを作るっていう方がいらして、その方は卒業生なんですけど、その方の作品は好きですね。あとはアートアンドサイエンスのチューターで有名なのは、ヘザーバーネットHeather Barnett。年金を調べてる先生なんですけれど、彼女のバックグラウンドが写真で、年金を使ってどうやってコミュニケーションの地図を作っていけるかっていうのをやっていて。私はそんなにバイオロジー/生物学には興味なかったんですけど、彼女の視点だったりとか、 ワークショップやチュートリアルをしていく中で、すごくインスピレーションになる。アートと化学は大きい問題だけど、どうやって消化していけばいいかというのが考えやすくなるっていう。