6月の中旬にスタンフォード大学を経営科学・工学専攻(B.S. Management Science and Engineering)、コンピューターサイエンス副専攻として卒業しました。
入学当初は、データ分析や科学的知見に基づく政策決定に関心を抱き、データサイエンスや公共政策を専攻したいと考えていました。しかし、インターンや大学での学びを通じて、意思決定全体における最適解をデータを用いて検証する手法の開発に大きな意味を感じるようになりました。政策や企業経営、また人間関係など、人間社会での実生活は意思決定の連続で成り立っています。激しい社会のダイナミクスの中で、意思決定プロセスにどのように数学的裏付けを持たせることができるかを学ぶことのできるオペレーションズリサーチ(経営科学)と工学専攻にすることに決めました。
多くのインターンシップを経験する中で、実社会でのデータ活用に関する理解を深めました。熊本地震で被災した経験を契機に、災害時にリアルタイムで取得される実社会データの分析に興味を持ち、大学一年のときには位置情報データを活用したサービスを提供するベンチャー企業でデータアナリストとしてのインターンを行いました。このインターンシップでは、災害時の避難行動の分析やデータの社会実装モデル案の検討を行い、放送局や地方自治体の関係者と協働しながら、災害対策におけるビッグデータの活用方法を模索することができました。
二年の夏には、オペレーションズリサーチが最も実際のビジネスで使われており、また資本主義社会における血液とも言える金融工学に強い関心を抱き、日本のヘッジファンドでデータ分析およびリサーチインターンを行いました。インターンでの日々を通じて、技術研究やビジネスにおける資金不足が日々創発する社会問題の解決を妨げている現実を知り、適切な投資を通じて企業の成長と技術革新を促進し、市場をセットアップするような役割を果たしたいと考えるようになりました。
他にも、アメリカのファンドでのデータ分析や投資戦略の最適化、またスタンフォードの友人が立ち上げたAI金融ツールの開発などにも携わり、多くの経験と学び、そして出会いがありました。
また、学部在学中にはスタンフォード大学のGreg Buchak教授のもとでリサーチアシスタントを務め、経済政策が住宅ローンなど国民生活に与える影響や、フィンテックを活用した住宅ローンの再融資に関する研究を行いました。経済政策に対する理解やデータ分析の技術を深めるだけでなく、解析が上手くいかない時にも粘り強く取り組む姿勢や、問題解決に向けた新しい視点を身につけることができました。
このように学部の間に多くの貴重な体験ができたのも全て財団の皆様の支援があったからこそだと思います。本当にありがとうございました。
今年の夏からはサンフランシスコを拠点とするファンドでエクイティのリサーチおよびデータ分析を行う予定です。また、スタンフォードのコンピューターサイエンス(concentration in AI) の修士課程にも合格しており、現時点では数年実社会で経験を積んだ後に、修士課程を修了するためにアカデミアに戻る予定です。将来的には、金融とコンピューターサイエンスの知識を活かして、投資戦略の最適化や深層学習を用いた株価や株価変動リスクの予測モデルなどの構築と実用化を目指しています。
大学入学前までは、自分が一度決めたことを最後までやり遂げることが最も重要であると信じていました。自分自身で敷いたレールを初志貫徹することもまた素晴らしいことですが、大学での生活を通じて、日々の中で見つけた興味やチャンスに飛び込み、自分でレールを敷き直すこともまた、とても価値のあることなのだと気づきました。今後も新しいことに挑戦し続け、自分の道を切り開いていきたいです。これからも応援をどうぞよろしくお願いいたします。
後輩の皆様へ、常に新しい興味や機会に対してオープンな姿勢を持ち続け、ご自身の可能性を追求していかれることを期待しています。皆様のこれからのご活躍を心から応援しています!