加納 虹輝
(スポーツ部門48回生
東京オリンピック特別助成対象)
●出場種目
7月25日│フェンシング男子エペ個人
7月30日│フェンシング男子エペ団体
【インタビュアー:アート部門49回生 鈴木 友里恵】
Royal College of Art デザイン研究課程。アート/デザインを両軸とする学際的な制作者を目指している。
ーー北京五輪観戦をきっかけに小学校6年生でフェンシングを始められたとのこと、五輪代表選手となられた現在まで変わらずに続いていることはありますか?
加納 : 「突く動作」にこだわることです。フェンシングは同時に突くという状況も発生する競技で、試合では手を伸ばす動作が速いほど有利になります。スピードは始めたときから強みだと言われていましたが、子どもの頃は眼と身体があまり連携できていなくて、いつもスピードを生かして勝てるというわけではありませんでした。 「突く」という動作は一見地味ですが、突く練習と基本練習は小学生から欠かさず続けています。フェンシングが楽しくて練習をしんどいと思ったことがあまりなく、高校生の頃もテストギリギリまで練習を続けていましたね。
ーー高校時代、遊び半分で出た試合で優勝したそうですね。この時の優勝についてお話をお聞きしたいです。
加納 : 優勝した高校の試合では、最初まったく勝てると思っていなかったんです。小学生からフルーレの選手で、たまに出るエペの試合で勝てることはあまりありませんでした。実は、その大会がエペの海外遠征の代表選考会を兼ねていて、フェンシングで海外に出て行くきっかけとなりました。小学生から怠らずに続けてきた突きの練習や基本動作のおかげで、高校生になって持ち味のスピードを試合に生かせるようになっていたのかもしれません。このような積み重ねが、高校時代のエペ優勝に関係していると思います。
ーー小学6年生から加納選手をつかんで離さない、フェンシングの魅力とはなんでしょうか?
加納 : フェンシングの中でもエペ種目の魅力はアグレッシブさです。子どもの頃から積極的に攻めていくタイプでしたが、昔は小柄なこともあり大柄な選手に対して積極的に攻めていけないことがありました。実は高校生で海外にで始めてからも、海外の選手になかなか攻めていけない時期がありました。エペの選手としてどんな選手にもアグレッシブに攻めていける転機になったのは、大学1年生で出場したシニアの大会です。当時19歳でジュニアクラスの大会が主戦場でしたが、シニアの大会なので国内の大柄な選手との対戦がありました。その時、ふと大柄な選手を「的が大きいな…。」 と、突くスペースが広いと捉えることができたんです。それから、どんな選手に対しても飛び込んでいく姿勢を保つことができて、 のちにワールドカップで3位に入賞できたことは印象的です。
試合の面白さという点では、2019年のカナダワールドカップ優勝が今でも印象に残っています。結果的に優勝できましたが、実はあまりいいコンディションでなく、最初から決勝まで1試合1試合ギリギリのところで勝つという展開が続いていきました。試合は気持ちで押されると負けてしまいますが、「勝ちたい」と思い過ぎてもダメなので難しいです。 試合に向けての練習ではプロテクターをつけたコーチに対戦相手の選手の動きを再現してもらい、突く練習をしています。練習を続けて行くうちに試合も楽しみになってきて「早くやりたいな。」と思いますね。
ーー最後に、加納選手が「これだけは誰にも負けない!」という武器を教えてください。
加納 : スピードだけは誰にも負けないですね。フェンシングには矢のように突きにいくというスピードに関する表現もあります。この「スピード」に「タイミング」を掛け合わせたものがフェンシングではとても重要です。
インタビューを通じてお話を聞けば聞くほど、フェンシングが大好きで子供の頃からフェンシング選手としての強さを追求してきた加納選手のあゆみが見えてきました。東京オリンピック後も、スピードを武器にする加納選手の進化に目が離せません。
(取材日:2021年6月18日 文:アート部門 鈴木友里恵)
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