宮本 昌典
第43・46回生
東京オリンピック特別助成対象
●出場種目
7月28日│ウエイトリフティング男子73kg級
【インタビュアー:学術部門49回生 山口 暉善】
ケンブリッジ大学で自然科学を専攻しています。座右の銘は「問い続けること」です。
ーーウエイトリフティングこそ自分の競技だと感じ始めたのはいつ頃ですか?
宮本 : 小学生の頃はレスリングをやっていたのですが、好きになれず練習がイヤでイヤで。次にやるスポーツは、楽しみたいと思っていました。そのあと始めたウエイトリフティングは記録が伸びていくのが嬉しくて、練習も楽しくできたんです。中学生の頃にはウェイトリフティング一本になりました。ジュニアの全国大会でトップで戦えるようになってきたあたりから、自分はこれをやっていくんだと思いました。もっと勝ちたくて、練習に励めました。
ーーそれ以来ずっと変わらず楽しいですか?
宮本 : どうだろう、昔の方が楽しかったかもしれないです。今は結果を出さないといけないプレッシャーがあるので。それでも、試合はやはり面白いです。
ーー試合の面白さ、気持ちよさは、バーベルを持ち上げた時の達成感なのでしょうか?
宮本 : いや、実はバーベルを持ち上げる直前が、一番力がみなぎって気持ちよく感じる瞬間なんですよ。試合では別室でウォームアップするのですが、その時から、試合モードのスイッチが入っています。周りの選手もどんどん声を出して重量を上げてくるので、自分も負けじと声を出していきます。ですから、本番でバーベルのバーを掴んだときは気合十分なんです。
僕の場合は、普段の練習中も試合と同じように集中のスイッチを入れるようにしています。
ーー練習の内容は誰と相談して決めるのですか?
宮本 : 自分の体調のことは自分が一番わかっているから、普段のメニューは自分で決めています。休養も大切なので、週に2日休みを入れるなど、スケジュールも自分で管理しています。伸び悩むときもあるので、そのときは監督や周りの選手にアドバイスをもらって調整しています。
フォームの修正方法やちょっとしたコツを教えてもらうことで、気づくことがあります。特に日本代表レベル同士だと「そこはガ―ッと」とか、擬音でも感覚が伝わります(笑)。
ーー練習はひとりですか?どうやって練習の質を保つことができますか?
所属する大学の練習場では、他の選手も一緒に練習しています。ベストに近い重量を持ち上げるときなどは、みんなが応援してくれて盛り上がります。ウェイトリフティングの練習場は、独特の雰囲気なんですよ。
ーーとても楽しそうですね。宮本さんの所属チームの特徴なんですか?
宮本 : 僕のチームだけじゃなくて、多分どこのチームも同じだと思います。ウエイトリフティングは孤独で過酷というよりは、楽しく練習できる競技ですよ。ただ、僕のチームは特に、いい意味で楽しい雰囲気だと思います。
ーー自分が重量を持ち上げる感覚と、他の人から見える姿、例えば軽々と上げたとか重そうだ、という印象は一致するものですか?
宮本 : 見ている人のメンタルによるのかもしれません。自分でも過去の動画を見ていて、実際には軽く持てていたはずなのに、重そうに見えることがあります。逆のパターンもあるので、見ている自分の調子によるのかなと思います。
ーーウエイトリフティングに向いている性格や体型などはありますか?
宮本 : 考えてみたんですけど、まず性格面では、日本代表チームで活躍している選手はみんな個性的な、我が強い人が多いです。それは、ウエイトリフティングがひとり舞台だからかもしれないです。僕がそうですが、試合で自分の順番になると「オレを見てくれ!」という気持ちで挑むことが多いです。自分がバーベルを持ち上げるときは会場のみんなが自分だけを見てくれる。ここが勝負どきだ、と力が入りますね。
競技に向いている体型は特にありません。背が低くて手足が短い方がいいと言われた時代もあったようですが、世界には背が高く手足が長いトップ選手もたくさんいます。筋肉についても、量よりも柔軟性の高さが求められます。自分の体型に合ったフォームで筋肉をしなやかに使って、より重量を持ち上げられるかどうかがポイントです。
ーーオフの時はどう過ごしていますか?ウエイトリフティング以外に好きなことは何ですか?
宮本 : 韓国ドラマをよく観ています。その国の文化がわかったりして面白いですね。韓国ドラマの観過ぎで、韓国料理を食べたくなることもあります。
あとは、ほとんどやったことはありませんが、ゴルフに興味があります。東京オリンピックが終わったら本格的に練習すると周りに宣言していて、次のオリンピックではゴルフとウエイトリフティングの両方で出ようかと。冗談ですよ。(笑)
ーー東京オリンピックではどういうプレーがしたいですか?
宮本 : 失敗しないようにしたいです。友人や知人でウエイトリフティングの試合を観たことがない人たちもきっとオリンピックは観てくれるので、その人たちの前で、失敗せず大成功の自分のプレーをしたいです。
ウェイトリフティングという競技は、ひとり黙々と練習するというイメージでしたが、実際にはチームメンバーと声の掛け合いなどで支え合いながら、楽しく和気あいあいと練習しているということが、新鮮でした。宮本さんはご自身の体の使い方を、深く理解しているということが、言葉の端々からもわかりました。トップ選手同士なら理解を擬音語で共有できるのも驚きです。宮本さんの五輪での活躍を心より応援しています。
(取材日:2021年6月30日 文:学術部門 山口 暉善)
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