――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?
私の将来の夢は,惑星探査活動や災害救助活動に代表される,極限環境下でのヒトのミッションに対して,ロボティクスを通して貢献することです.私は幼い頃,ドラえもんを見て育ってきました.ドラえもんでは,日々困っているのび太君に,ドラえもんが,不思議な道具でのび太君を手助けします.幼いながらも,それを見て当時の私は,「ロボットカッコイイ!!」,「人の役に立ちたい」といった意識が芽生えてきました.その後,小惑星探査機はやぶさが携わったサンプルリターンミッションや福島原発事故での原子炉建屋内探査ミッションにロボットが利用されたことを知り,ロボティクスの特に自律性に興味を持つようになりました.自身のやりたいこと,好きなことでヒトの役に立つのであれば最高ではないでしょうか?
こうしてロボティクスに興味を持ち,大学ではロボティクスに強い東北大学へと進学しました.所属した研究室の吉田和哉先生は,宇宙ロボティクスの世界的権威です.幼い頃から,海外への憧れがあり,将来は海外で研究をしてみたいとは思っていました.当初は学位を取るつもりは全くなく,せいぜい交換留学で行ければいいかな程度に思っていました.ちょうどその頃,東北大で米国大学院学生会(自分も幹事として手伝わさせて頂いています)が東北大で説明会を開催し,海外でPhDを取り,非常にインパクトの高い研究をしてかつキャリアにつなげている先輩方のお話から,海外PhDに興味が出ました.このあたりの話を吉田先生を含め,周囲の人間へと相談したところ,「ロボットをやるなら是非アメリカで修行をするのがとても良い」と大変強く背中を押してもらい学部4年生の12月に米国大学院へ出願し,結果としてUCLAのDennis Hong先生の下で研究をしています.
Dennis Hong 教授はワシントンポストより,「ロボット研究のレオナルドダヴィンチ」,「月面着陸に次ぐ成果」と評されるほどロボティクスの卓越した研究者です.また僕の研究テーマである崖環境下での崖登りロボットを,彼がポスドク時代,NASA/JPLにて行っており,非常に刺激的なアドバイスを頂けておりとても良いです.
なので,まとめると,ロボット研究者としての非常に質の高い鍛錬を積める場所がアメリカ大学院であり,そこでの経験を通して将来的にヒトの役(e.g., 極限探査環境)に立てれば良いと思っています.
日々の生活、生活環境は?
日々は基本的に研究です.平日及び日曜日は基本的に朝から晩まで研究室で研究をします.ミーティングがちょくちょくあり,その中で,自身の研究成果や困っていること,今後の方針などを議論します.研究テーマとしてはoptimizationをめちゃくちゃ使うので,optimizationの専門の先生に会いに行って話すこともあります.ひたすらコーディングする日もあれば,ただ紙とペンで論文や数式とにらめっこする日,ロボットが壊れないことを祈りながら,ロボットの実験を行う日,他の研究機関の研究者の講演を聞く日など,毎日多忙ですが刺激的な日々,とても成長を実感できる日々を過ごしています.研究の性質上,ソフトウェアとハードウェア,理論と応用を両方深く知る必要があるため,日々努力して追い付こうと思っています.
1年目はPreliminary examという学力試験突破が最終目標で,ひたすら授業を取り,研究はほぼ進みませんでした.2年目はより研究に集中し,初めての論文も無事採択されました.3年目は研究で成果を出しつつ,Oral Qualifying Examという比較的drop率が高い口頭試問も突破し,無事PhD Candidateへとなりました.現在はボストンにて研究インターンシップをしています.
夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていることを教えてください!
自分の中で「何をやりたいのか」,「何ができるのか」,「何をすべきなのか」,「他者とどう区別をすべきなのか」など,日々その時々に応じたdecision makingをすることです.個人的にはノートとかに書いておくと,気持ちや考えを整理でき,脳の無駄なキャッシュメモリを使用せずに済むのでお勧めです.また昨年度から,研究室のボスからclimbing robot teamのリーダを仰せつかり,グループメンバー(特にundergrad research assistant)の悩みなども聞くようにして,グループがより良い方向に行くように努力しているつもりです.
最後に、これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負をどうぞ!
PhDも佳境に入ってきており,もう4年目がスタートします.後半戦ということで,ますます研究に打ち込んでいきたいと思っています.具体的には,今行っている研究を終わらせたら,より深みに進みつつ,かつ他の研究分野である,例えば強化学習など,の研究と融合させていきたいと思っています.ロボティクスは,他の分野と比較して,圧倒的に歴史が低い学問分野です.例えば,モノを掴む,歩くといった人間が簡単にできることが,皆さんの想像以上に圧倒的にロボットにとっては難しいです.将来の夢の実現のために,少しでも研鑽を積んで将来は自身の研究開発したロボットが活躍するシーンを皆さんにお届けできればいいと思います.