2021/09/07

澤岡 洋光 活動レポート

2021/09/07

澤岡洋光

澤岡 洋光 Hiromitsu Sawaoka

「新たな物理法則を発見したい。」これは、私が物理を志したきっかけであり、私の人生の大きな目標である。この目標を実現するため、私は現在、ハーバード大学で量子光学の技術を用いた低エネルギーでの素粒子実験を最初期の段階から立ち…

――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?

私の将来の夢は、自ら研究グループを率いて、既存の物理法則の枠組みを超越する実験結果を導き出すことです。この夢のきっかけは、中学校の頃の物理の実験の授業で、実験結果を注意深く考察して、その実験では意図されていなかった物理法則を独自に発見したことです。これ以来、思慮深い実験から新たな自然界の法則を発見せんとする物理学の虜になりました。特にトロント大学に進学後は、様々な分野の研究室で1年生の時から積極的に研究を行ったことで、物理研究の奥深さに触れ、その中でも特に原子や分子を用いた実験に興味を持ちました。大学院でさらにこの分野を究めるため、分子のレーザー冷却の世界的権威であるハーバード大学のDoyle研究室への進学を決めました。研究内容は、これまでレーザー冷却されたことのなかった複雑なYbOH分子を超低温にレーザー冷却して、これを用いて時間対称性を破るような新たな物理現象を発見することです。

パンデミック前の研究室にて
分子のレーザー冷却を行っているところ

――日常生活、生活環境について

私は普段は基本的に研究室で実験を行っています。実験と一口に言ってもその内容は様々で、レーザーの調整、真空装置や極低温実験器具の制御、データ解析やシミュレーションのためのプログラミングなど多岐に渡ります。また、実験手法もこれまでにない画期的な方法なので、実験装置そのものを自分でデザインし、パーツの発注や金属部品の制作までも自分たちで行っています。私が参加したときは文字通り空っぽだった実験室も、現在では自分たちでデザインした実験装置が立ち並び、そこで得られたデータは著名な学術誌への論文発表につながっています。現在も新たな実験手法を試行錯誤しつつ研究を進めています。COVID-19のパンデミックの際は、2ヶ月ほどロックダウンにより実験室が使えない状況でしたが、その間はデータ解析などに時間を充て、ロックダウン後は数ヶ月の人数制限期間を経て普段通りの研究生活に戻ることができました。

自作の実験装置たち。右側の装置は私がデザインした超伝導電磁石で分子を減速する装置です。

生活環境はかなり恵まれていると感じます。ボストンはハーバード大学やM I Tといった有名大学が立ち並ぶ世界有数の学術都市で、特に超低温分子の分野ではハーバード・M I T間のコラボレーションがたくさん行われています。共同研究や共同セミナーはもちろん、パンデミック前は同分野の全研究室で毎年合同合宿にて研究発表を行っていました。日常生活においても、ボストンは適度に都会なので、不便さはあまり感じず、休日には郊外に出かけて自然の中でリフレッシュもできます。

Spectacle Island から撮影したボストン市街(左)とローガン国際空港(右)

――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること

常に多角的に物事を考え、新たな視点で実験を行うようにしています。例えば、先輩が考えた新たな実験手法に対し、これまでに超低温原子の分野でよく使われてきた技術を合わせることでさらなる実験手法を提案したりしています。この夏からは指導教官とも毎週定期的に個人的にミーティングを設け、新たなアイデアを議論するようにしました。さらに、私は様々なアウトリーチ活動にも取り組んでおり、大学生・高校生や他分野の研究者たちに自分の研究を積極的に発信しています。自分の研究をわかりやすく言語化することで、さらに新たな視点で自分の研究を見つめ直すことができています

大学院2年生の時に取った「場の量子論」の授業での友人たちとのディスカッションより

――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負

これから大学院も4年目の後半戦に突入するので、私自身が主導して実験を行う機会をできるだけ増やしたいと考えています。私の実験仲間には非常に優秀な先輩がおり、彼からは数え切れないほど多くのことを学んでいますが、彼に頼らずとも実験を主導できるよう研鑽を積みたいと考えています。将来私自身が自ら研究グループを率いるためにも、この1年間という時期でどれだけ成長できるかは重大な意味を持つと考えています。この経験を生かし、将来はノーベル賞級の発見ができるよう精進したいです。