――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?
将来はヨー・ヨー・マやマイスキー、ロストロポーヴィッチ、デュ・プレのような世界中で演奏するチェリストを目指していきたいと思っております。
この夢を叶えるために留学先として最初に思いついたことはバッハやブラームス、ワーグナーなどが誕生した国でその国の言葉に触れながらその地で西洋音楽を勉強したいということです。
そして4月からその第一歩を踏み始めるためにベルリンに拠点を移しました。
まだベルリンに住んで5ヶ月しか経っておりませんが実際にこちらで生活してとてもインターナショナルな町だと感じております。今までずっと日本で勉強することができ、今は日本で勉強した時間がかけがえのない宝のようなものになっています。もちろん、これからも日本での勉強、演奏をしつつ、海外でも勉強して学んだことを日本でチェロという楽器の魅力をもっとお伝えしてまいりたいと思います。
どの楽器にも限界というものは存在しますが私はその限界を突き破りたいという思いがあります。
ベルリンは世界各国から芸術家や音楽家が集まっており、演奏会に行ったり、他の学生さんのマスタークラスを聴講しに行ったりし、今まで以上に沢山の刺激を受けることができています。そしてこれからは自分自身の演奏の可能性の幅というものをもっと広げるために色々な経験を積み重ねて、もっと集中して音楽に取り組めていけたらと思います。
また5月にはドレスデンに行く機会もあり、ドレスデン歌劇場で聞いた「蝶々夫人」は今でも忘れられません。この演出は宮本亞門氏によるモダンな演出と昔ながらの日本の文化が巧みに融合され本当に素晴らしい公演でした。
いつまでも人間の記憶に残るような演奏をするためにも一生懸命ベルリンで勉強してまいりたいと思います。
2022年8月31日 堤剛先生の80歳バースデーコンサート サントリーホールにて
――日常生活、生活環境について
ベルリンに来てからは自炊することが多くなり、お料理にも興味を持ちはじめました。
料理をしていてふと感じたことが料理と音楽は似ているということです。これは桐朋音楽大学で音楽歴史の授業を教えて下さった先生がおっしゃっていたことでした。今回は味が濃すぎた、お塩が足りない、お酒の量が微妙に多いなど、音楽でもヴィブラートをかけすぎ、音程が微妙に高い、表現が足りないなど、ちょっとしたことが音楽や料理の味を変えてしまうことの共通点を自分自身で感じることができました。
今までほとんど料理をしたことがなかったのでまさかベルリンに来てお料理をするということは考えてもいませんでしたが海外へ留学しなければできなかったことの一つだと思っております。
――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること
まずは体調管理を1番に気をつけています。本当は散歩などをしたいのですが性格上億劫なため、家でストレッチをしています。
また常に家族や周りで支えて下さっている方、財団の方に感謝しています。音楽家という難しい職業でこうして楽器を演奏していられること、留学させていただけことに毎日感謝を忘れずに過ごしています。
ベルリン 早朝のブランデンブルク門 (2022年5月)
――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負
10月からベルリン芸術大学の授業が始まりどういう生活が始まるのか想像もつかない状態です。また海外からきた学生と馴染めるか不安も沢山ありますが、学校では歴史やソルフェージュ、室内楽の勉強を頑張りたいと思います。
また時間のある際には演奏会やオペラ、バレエなども絶対に聴きに行きたいと思っています。さまざまな方向からの視点や知識を持つことによって自分の演奏技術や表現に反映できると信じています。
ハンブルクでのマスタークラスにて (2022年9月)