これまでの亀井さんの歩み、コンクールのこと、留学、音楽についてずっとお聞きしたいと思っていた質問にとても丁寧に答えてくれました。
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Q1. この日はショパンのピアノ協奏曲第1番を披露されました。今年の全国ツアーでもショパンをプログラムのメインにされていますが、ショパンの曲のどういうところが好きですか?
ピアノという楽器の美しい音色が最大限引き立つようなメロディや、心地よい中で複雑に発展したハーモニー、特有のリズム感がすべて最高の水準で昇華されていて、作品を一度聴いただけで大きな充実感を与えてくれる作曲家だなと思います。
Q2. 高校入学時、愛知県立明和高等学校音楽科に入学されたそうですが、この決断は将来を決める大きなものだったと思います。この時にはすでにピアニストになろうと決めていたのですか?また、高校3年になる時、愛知県立明和高等学校を中退し、桐朋学園大学に初の飛び入学特待生として入学されました。17歳で愛知県から東京に移ることになったわけですが、どういう気持ちで上京されましたか?
高校に入るときには、まだピアニストとしての道は見えていなかったと思います。小学生の頃から漠然とピアノと共に生きてきて、より色んな角度から学んでみたいという気持ちが芽生えて音楽科に進みました。
大学に飛び入学したときは、新しい生活環境そのものへの不安や、高校の友達と最後の1年を過ごせなくなる寂しさなどありましたが、当時の先生も飛び込む背中を押してくださって、とにかくどうなるかはわからないけど信じて全力で進んでみよう、という感覚でした。
Q3. 2022年はマリア・カナルス国際ピアノコンクール第3位、ロン=ティボー国際音楽コンクールでは第1位、および聴衆賞、プレス賞を受賞され、その後の活躍につながる大きな転機になったと思います。いかがでしょうか。それでも亀井さんは更なる進化を目指しているように思います。今後どんな作曲家、曲、分野、音楽に挑戦したいと思っていますか?
これまで自分はvirtuoso※1な面の強い演奏スタイルでしたが、今はショパンという作曲家を多く勉強する中で、カンタービレ※2の極地や曲を通して内面の感情と向き合うことに喜びを感じています。並行してバッハやベートーヴェンなどの古典も勉強したいなと思っていて、そういったクラシカルな作品でしっかりとした説得力を持った演奏家に憧れます。 自分の元来のスタイル的には、音像そのものやエネルギーそのものに美を見出そうとするコンテンポラリーな作品も得意なので、そこもレパートリーを拡張していきたいです。作曲の勉強としても興味の尽きない分野です。
※1 virtuoso ビルトゥオーソ: 卓越した技巧や能力を備えた演奏家
※2 カンタービレ:(音楽用語で)歌うように、表情豊かに
Q4. 2023年10月からドイツのカールスルーエ音楽大学に留学されました。カールスルーエ音楽大学を選んだ理由として児玉桃先生がいらっしゃることを挙げていますが、児玉桃先生のレッスンはどんなレッスンで、特に何に惹かれているのでしょうか。
ご自身も演奏家として第一線で活躍されていらっしゃるがゆえ、演奏に対して課題を見つけた時に、それに最適な対処法は何か、最適な練習法はどんなものか、ということをダイレクトに指摘してくださるレッスンに感銘を受けました。
Q5. ドイツに留学後の亀井さんを見ていると、まさに水を得た魚のように嬉しそうに毎日を過ごしているようにお見受けしますが、いかがですか?
充実した濃いレッスンはもちろん、日本で忙しくしていると中々取れなかった、名手たちのリサイタルやその他の演奏会に足を運んでじっくり音楽を楽しんだり、美術館を巡ってみたり、そういったインプットの時間を取れるようになったのがとても楽しいです。
Q6. 音楽だけではなく様々な分野で大きく飛躍していく若い方を見ていると、いつも成功の秘訣は何なのだろうと考えます。才能、努力、強い気持ち、運、人との出会などいろいろなものがあると思いますが、亀井さんは何が必要不可欠だと思いますか?
僕の場合は、幼少期の先生や音楽仲間との出会いと、好きなこと(僕の場合はたまたまそれがピアノでしたが)に早く気づけたという運がかなり大きいかなと思っています。
最初の先生が僕の好きな曲を尊重して弾かせてくれつつ、かつバッハやツェルニー、ソルフェージュなどの勉強も楽しくやらせてくださっていて、そういう方針が僕にとっては本当に良かったのかなと思っています。技術的に幼少期にどれだけ弾けるかはやはり才能も大きいかもしれませんが、それなりに大人になってきたら、どれだけの量、どれだけの質、どの方向に向かって努力をし続けられるか、というところが大切な気もします。
Q7. Q3の回答にもありましたが、作曲も勉強されていますね。作曲のどんなところが魅力ですか?
やはり等身大の自分から溢れ出てくる音楽をそのまま自由に描いていけるというのが、楽しいところです。もちろん、歴史的な偉大な作品に並ぶようなものを今の自分が生み出せるとは到底思えませんが、最初は何かの真似事でも、インプットアウトプットを着実に重ねていって、何十年か先で、1mmでも自分にしかないオリジナリティに辿り着けたらなと思っています。
Q8. 音楽以外では何を楽しんでいますか?
リアル脱出ゲームに行くことが好きで、普段から謎解きを解いたり作ったりして楽しんでいます。自分が体験して楽しいと感じた物を自分も作りたくなるモチベーションは、作曲と通ずるところがあるなと感じています。
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亀井さんの回答を読んでいると、すごく理路整然としていて、的を射ていて、論理的で頭の良い方だなという印象を受けます。それが自己分析にもつながっていると感じます。最初、謎解きとピアノ?と思いましたが、音楽に関する謎解きを作っているのを見ると、曲の分析や作曲にもつながっているように思えてきました。
駆け足で成長を続けているような亀井さんのこれからの活躍が本当に楽しみです♬
ワルシャワ国立フィルハーモニー交響楽団
日時:2024年02月07日
14:00
会場:サントリーホール
ワルシャワ国立フィルハーモニー交響楽団
音楽芸術監督:アンドレイ・ボレイコ
◆プログラム
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op. 11
☆ソリスト:亀井聖矢
ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 Op. 92