――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?
私はシカゴ大学化学科のPh.D.課程にて, Guangbin Dong教授に師事し有機化学を学んでいます.世界各地から優秀な研究者が集い切磋琢磨するアメリカの大学院で学びたいという想いは長年持っていましたが,優秀な同僚との議論で鍛えられること以外にも研究室の垣根を越えたミーティングやセミナーが多いこと,学内での発表の機会が多くプレゼン力が鍛えられること,また日本と異なり指導教官以外にはラボにスタッフはいないため自身で研究を遂行する能力が早い段階で鍛えられる等のメリットがあります.
ちなみに今の研究室を選んだのは“金属触媒を用いた炭素-炭素単結合の官能基化”(反応性の低い炭素-炭素単結合を別種の化学結合に変換)という稀有で興味深い研究に惹かれたこと,また若い指導教官の下で学生たちが皆素晴らしい研究成果を出せていると実際に訪問して感じたからです.博士課程修了後も,引き続き研究者として化学分野での研究に携わりたいと考えています.
日々の生活、生活環境は?
1年目はteaching assistantとして大学2年生向けの有機化学の講義を担当したり,必修の講義をこなしたりしました.TAとしては実験講義および座学を同時に15人程度教えていました.実験では実験操作の簡潔明瞭な説明を,また座学でも教授の講義の復習や小テスト等を行いました.学部生達がただ効率的に理解を深められるだけでなく有機化学により興味を持ってくれる方法を常に考える日々でしたが,日本の化学科では大学院生が講義をすることは恐らくないと思うので,とても貴重な経験ができて楽しかったです.
2年目以降は研究室での研究活動により専念しています.実験系の研究室ということもあり1日の多くを研究室で過ごしますが,研究の合間には食後のコーヒーブレークを同僚と楽しんだり,運動が好きな同僚はよくジムでリフレッシュしたりしています.また,現在はコロナウイルスもあり外出は難しいですが,以前はよく同僚とランチに出かけたり,教授主催のラボイベント(野球観戦やホームパーティー等)を開催したりしていました.
夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていることを教えてください!
1日・1週間・1ヶ月といった異なるスケールでの研究計画を練り,日々どの程度進めることが出来たかを内省するようにしています.これによって進捗だけでなく,自身の研究の全体像や中・長期的展望を常に確認しています.また合成化学者にとっては必須ではない知識,例えば結晶学や計算化学等に関しても将来使える可能性があるので勉強し,今行っている研究にも他者との共同研究という形ではなく自身の手で導入しています.
最後に、これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負をどうぞ!
博士課程も残り約3年となりました.より多くの論文を書くのも大切かもしれませんが,それ以上に1つ1つの研究テーマの質を高めていきたく思います.そのためにも,過去の研究の焼き直しではなく有機化学という分野が長期にわたって抱えている課題の解決への糸口を示せるようなことに専念するつもりです.例えば,現在の合成化学はパラジウムを初めとした希少な金属元素に大きく依存していますが,それらの多くを輸入に頼っている現状を打破したり,将来的な資源の枯渇への懸念を払拭したり出来る新たな触媒の開発が出来ればと思います.