――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?
私はイギリスのエディンバラ大学の三年生でコンピューターサイエンスと人工知能を専攻しています。私がコンピューターを志したのは高校二年生の数学で剰余演算を学んだときです。コンピューターへの興味から剰余演算の応用例として、RSA暗号を調べました。当時の私にはその仕組みは簡潔で美しく、好きな数学とコンピューターがつながった瞬間でした。
コンピューター技術の中でも特に興味をひかれたのは自然言語処理です。言語は人間の知性の最たるものであり、その曖昧性と複雑性からコンピューターで扱うのは難しいと考えていました。そのためニューラルネットワークでの文章生成や自動翻訳の技術を知った時、驚くとともに無限の可能性を感じました。エディンバラ大学進学の決定も自然言語処理分野で著名な大学だからです。
私の将来の夢は自然言語処理への貢献です。私は日本語、中国語、英語が使えます。言語間を行き来していて思うのは、言葉には意味以上の上位概念が含まれることです。現在の機械翻訳は主に言語を対応する意味を持つ別言語に変換しますが、それは言語を意味を介して変換しているにすぎないといえます。機械翻訳で小説の文章を変換すると翻訳後の文章からの印象が原文の印象と異なるのはそのためでしょう。
将来、言葉の意味以外の概念をも考慮できる機械翻訳の開発はとても有意義です。また失われつつある言語(方言など)と現在の言語間での上記のような機械翻訳システムの構築、それは失われつつある言語体系の意味や印象等の概念を考慮したモデル化とも言えます。これは話者が失われた言語体系を数学的モデルとして保存できる可能性を意味します。
日々の生活、生活環境は?
コロナ前は夕方まで大学内で講義を受け、夕食後は大学図書館で自習や課題をしていました。休日は午前中に運動(近くのアーサーズシートという丘への登山)をし、昼食後、自宅でプログラミングや復習をします。
コロナ後の今はオンライン授業になりました。エディンバラは北極圏に近く夏は昼間が長く冬は夜間が長くなります。夜、プログラムを打つことも多くなりました。冬は日光を浴びる機会も少なくなります。体調管理も重要なので生活習慣をしっかり維持したいです。また、部屋にこもりがちな現状では友人との意見交換や議論はより有意義になりました。留学するうえで友人は大切です。 慣れない海外で予想外の出来事はつきものです。そんな時、愚痴を言いあったり、情報交換できる友人の存在は大切です。
夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていることを教えてください!
自然言語処理の勉強のため論文や書籍で勉強したり、実際にプログラムを組んでアルゴリズムの理解を深めたりしています。特に冬休みや夏休み等の長期休暇は勉強に格好の期間です。期末試験を終えると解放され休みたくなります。しかし、集中して新たな知識を学べる、自由にプログラミングを行える等の期待のほうが大きいので、すぐに新たな内容を学んだり、新プロジェクトを立ち上げたり、インターンを探したり、自分の興味のある研究分野の教授へもコンタクトしています。さらにプログラミングスキル向上のため学内で開催されるハッカソンやプログラミングコンテストにも積極的に参加しています。
最後に、これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負をどうぞ!
来年度は自然言語処理コースの履修や教授とのプロジェクトもあり楽しみです。大学最後の年で大学院への申請手続き等もあるので忙しい一年になりそうです。振り返れば一瞬の三年間でした。無事学んでこれたことを、支援してくださっている財団の皆様や、現地で支えてくれた友人たち、様々な知見を与えてくれた大学の教授・スタッフ陣に深く感謝しています。来年度も充実した一年となるよう引き続き学習に励んでいきたいと思います。