――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?
大学生の時に、祖父がパーキンソン病と診断されました。その時パーキンソン病のような「まだ完治するための薬がない病気」と向き合う家族の痛みを実感しました。できなくなること、諦めなくてはいけないことが多くなる中でも、私を救ってくれたのは祖父の人生を楽しみ続ける姿勢でした。そして、その想いをサポートしてくれた医療チームにも心を動かされました。薬がなく、”cure”できずとも、”heal” (癒し)を与えることはできることに気づかされました。
当時、祖父の想いをサポートし続けてくれた医療チームは緩和ケアを実践していました。緩和ケアというのは本人が家族や、医療・ケアチームと一緒に繰り返し話し合い、患者、家族の想いを共有する取り組みです。本人の価値観をまず第一にし、それを基盤に医療・ケアを組み立てる。あくまでもケアチームは患者さんが「大切にしたいこと」を支える役です。
治癒が望めない時、死が迫っているときにどのようなケアができるのか?抗がん剤治療などでは、時にはリスクの方が大きいこともあります。このような場合、「大切にしたいこと」が治療のために妨げられることもあります。
このような状況の時に緩和ケアは役に立ちます。患者さん、そしてそれをサポートする家族と医療チームで「患者さんが大切にしていること」を尊重したケアの選択を支援します。
私は緩和ケアの考え方はすべての患者さんに応用できると思います。病状に関係なく、患者さん、そして家族の方々はみなそれぞれに「大切にしたいこと」があると思います。日頃から「大切にしたいこと」について考えることによって、一人一人の患者さんに適した医療を目指します。
――日常生活、生活環境について
現在は医学部大学院の2年生です。アメリカの医学部は、大学卒業後に医学大学院として4年間在学します。私の大学では、2年目から病院での研修が始まります。私はBrigham & Women’s Hospitalという病院で研修をしており、小児科、産婦人科、外科、内科、様々な専門を回っています。ほぼ研修医と同じスケジュールなので、朝5時に回診が始まる時や、週末・24時間シフト・当直の日もありますが、毎日多くを学びながら楽しんでいます。色々な専門を見て、将来自分が取り組みたいと思う専門を見つけられるよう日々頑張っています。(現時点では、内科志望です!)病院のそとでは勉強(専門ごとのテストがあるので、病院から帰った後は基本的にはすぐに勉強です)、運動(ハーフマラソン・水泳・ヨガ)、そして課外活動(Narrative Medicine関連、研究、などなど)をしています。忙しい毎日ではありますが、帰宅後は同じような毎日を過ごしている医学生のルームメイト3名と和気藹々できることが心の支えです。
――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負
臨床実習が多いこの一年、個人的にはこれから「医学、Narrative Medicine、研究、そして私生活とのバランスをどのようにとるのか?」工夫したいです。大変な時もありますが、目指している将来へ着々と進んでいるのを感じます。臨床研修で患者さんやスタッフにありがとうと言ってもらえることで日々の力をもらっています。学費・生活費の心配なく、学問に取り組むことができることに感謝しています。また、さまざまな分野に進む財団生との対話を通して、刺激をもらえることも魅力の一つです。