2025/02/25

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を弾く│吉見友貴

2025/02/25

吉見友貴

吉見 友貴 Yuki Yoshimi

優秀な音楽家が沢山溢れかえっている中、自分は何故音楽をやっているのか、どのような音楽家になりたいのか自問自答していましたが、ボストンでの留学が始まって、改めて音楽が大好きだということを認識し、将来の漠然とした不安よりも私…

2025年1月25日、サントリーホールで開催されたのは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲を5名のピアニストが演奏するという斬新なコンサート。そして第3番を弾くのは財団奨学生の吉見友貴さん!吉見さんは燕尾服に身を包み、自信に満ちた様子で、颯爽と舞台に登場しました。どんな気持ちでピアノに向かうのだろうとドキドキしながら最初の音を待っていましたが、力強く、若々しく、堂々とした演奏を披露されました。

この日のコンサートのこと、2020年秋からの留学生活のこと、今後のことなど、様々な質問に答えてくれました。

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Q1.この日のコンサートは、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全曲演奏会。ベートーヴェンが作曲したピアノ協奏曲は全部で5曲。年代も異なる個性的な5人のピアニストが一曲ずつ演奏する中で、吉見さんは最年少。吉見さんが弾いたのは第3番。そして会場はサントリーホール。この演奏会に招かれた時はどんな気持ちでしたか。そしてどのような準備をしてこの日を迎えましたか?

お話をいただいた時は、自分が素晴らしいピアニストの中で弾いて良いのだろうかと不安な気持ちもありました。しかし同時に、ベートーヴェンの協奏曲全てを一夜にお客様に聴いていただく機会はなかなか無いので、とってもエキサイティングな演奏会になるのではという期待もありました。実はベートーヴェンの協奏曲を演奏することが初めてだったので、できる限り入念に準備をしました。レッスンはもちろんのこと、複数の友達にオーケストラパートを弾いてもらったりと深く勉強ができたと思います。

当日サントリーホールの入り口で

 Q2.この日は燕尾服に身を包み、颯爽と舞台に登場し、とても幸せそうに溌溂と演奏しているようにお見受けしました。この日の演奏会で得たこと、感じたことはどんなことでしょうか。この日はどんな演奏をしたいと思って臨みましたか?目指した演奏はできましたか?

4年ぶりのサントリーホールだったので非常に緊張しました。演奏家にとってサントリーホールで演奏できることは一つの憧れです。会場入りした時は雰囲気に圧倒されましたが、最年少ということもあり、やってきたことを信じて恐れることなく自由に演奏しようと臨みました。もっと良く弾けたのにと思う部分はありましたが、良い集中を続けることができ、満足いく演奏になりました。


Q3.吉見さんは2020年の秋からニューイングランド音楽院に留学して、2024年5月に学士課程を修了。そして10月には修士課程が始まりました。吉見さんにとってこの4年半は、本当に貴重な経験の連続だったのではないかと思います。吉見さんにとってこの4年半はどんな期間だったでしょうか?

思い返すとあっという間の4年半でした。嬉しいことや楽しいことと同時に辛いことや苦しいこともたくさんありましたし、何をやってもうまくいかない時も何度もありました。しかし絶えず音楽にのめり込んだ時間だったと思います。

ニューイングランド音楽院学士課程の卒業式

 Q4.この4年半の留学を経て、自分は変わったと思うことはありますか?また、変わっていないことはありますか?

音楽に対して真摯であるべきという自分の芯となるものは変わっていないと思います。気を衒い自分を誇示するためのものではなく、これからも誠実に音楽と向き合っていきたいと思っています。

変わったことと言えば、楽観的になり、色んなことを大目に見るようになったことでしょうか。以前は練習の時に納得がいかない箇所を、これではダメだと何十回も繰り返したりしていましたが、まあ今日のところはこれで良いか!と思うようになりました。自分自身にNoを突きつけ、自分自身を追い詰めすぎることが少なくなり、自分を認めてあげられるようになったと思います。

ボストンの大きな川チャールズリバー

Q5.来年の秋には修士課程を卒業でしょうか。以前、その後はヨーロッパで勉強したいと話されていたと思いますが、ニューイングランド音楽院を卒業した後のことは考えていますか?

修士課程卒業後はヨーロッパで勉強したいと考えています。少々アメリカに慣れすぎてしまったということもありますが、場所を変えクラシック音楽の本場で伝統のある文化に囲まれて勉強することは刺激的な時間になるのではないかと思っています。

Q6.音楽の道を進む中では、いいことばかりではなく、大変なこと、苦しいこともあると思いますが、ここまで続けてこられたのはなぜだと思いますか?

音楽が好きということです。音楽に悩まされても最後に救ってくれるのはやはり音楽です。

Q7.今、ピアノ以外ではまっていることはありますか?今もジムに通っていますか?今も4重跳びができますか?

今は料理にハマっています。毎日暇さえあれば、ポップスやロックを聴きながらキッチンに立っています。笑 以前は頻繁にジムに通っていましたが、足が遠のいてしまい、、、(まだ登録はしているのですが)。4重跳びは練習すればまだできるかもしれません。笑

お手製ハンバーグ!

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堂々とした演奏の裏には最大限の入念な準備があること。昔から吉見さんが言っていた「音楽に対して真摯であるべきという自分の芯」は変わっていないことなど、吉見さんのいろいろな言葉が心に残るインタビューになりました。お料理をする時は、ポップスやロックを聴きながらキッチンに立つのですね。吉見さんの普段の演奏に、そのリズム感や音楽を感じる時がある気がします。「音楽に悩まされても最後に救ってくれるのはやはり音楽です。」この言葉、いいですね!

ニューイングランド音楽院修士課程を卒業後はヨーロッパで勉強したいとのこと。アメリカでの6年、そしてクラシック音楽の本場ヨーロッパでも研鑽を積んだ吉見さんはどんな演奏家になっているのでしょうか。その姿を見るのが楽しみです!

吉見友貴

日時:2025年01月25日 17:30
会場:サントリーホール

ピアノ:上原彩子、三浦謙司、吉見友貴、ソン・ミンス、横山幸雄
指揮:現田茂夫
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

◆プログラム
第1部
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調Op.15 (ピアノ:上原彩子)
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調Op.19 (ピアノ:三浦謙司)
第2部
ピアノ協奏曲第3番 ハ短調Op.37 (ピアノ:吉見友貴)
ピアノ協奏曲第4番 ト長調Op.58 (ピアノ:ソン・ミンス)
第3部
ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調Op.73「皇帝」(ピアノ:横山幸雄)