――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?
私は、現在カナダ・オンタリオ州にあるトロント大学で、コンピューターサイエンスと数学を学んでいる大学3年生です。私の興味と研究対象は、HCI(Human-Computer Interaction)、教育、ヘルスインフォマティックス、ユビキタスコンピューティング (Ubicomp)、UI/UX Design、組み合わせ最適化、スケジューリングAIなどの広い領域にあり、大学卒業後の進路は、研究系の大学院進学を希望しています。未来をデザインする実現方法やアイデアを美しく表現できる力を身につけて、将来、明るい人類の未来に貢献出来る日を夢見ています。
8歳のときに小学校の授業で初めてプログラミングに出会い、私は、その魅力に夢中になりました。初めて自分のノートパソコンを持ったのは、11歳のときで、その翌年、24時間でアプリを作るハッカソンのイベントに参加し、プログラミングをする高校生たちと出会い、彼らから大きな影響を受けました。私が生まれ育った街は、アメリカ・サンフランシスコの南にあるシリコンバレー(Silicon Valley)と呼ばれる場所で、世界中から多くの起業家やエンジニアが集まってくる革新的なテクノロジーの街です。同時に格差と競争が激しく、私は、その文化的背景から大きな影響を受けて成長をしました。
大学生になった現在、振り返ってみると、私の人生の方向性を決めるきっかけとなるふたつの出会いが高校生の時にありました。ひとつは、国立情報学研究所の「情報科学の達人プログラム」に参加し、そのコミュニティーで後のメンターとなる研究者の先生たちと出会えたことです。彼らの驚異的な論理的思考力や創造性などを目の当たりにし、感動しました。
同時期、スタートアップを始めたばかりの高校の先輩たちとの再会がありました。最先端技術の激しい競争世界で繰り広げられる爽快な話は、私のいる小さな世界の外に、もっと大きな世界が広がっているということを教えてくれました。このふたつの出会いは、私の心に強烈な印象を残し、情熱的で圧倒的な努力をしている彼らの姿に、心からの尊敬と強い憧れの気持ちを抱きました。高校を卒業したら、まず親元を離れ、小さなバブルの世界から外へ出て行き、コンピュータサイエンスの知識と技術を身につけることを目指しました。
トロント大学は、学部と大学院を合わせると約10万人の学生が在籍している、発明と革新に満ちたカナダ最大の研究集約型総合大学です。コンピュータサイエンス学部には、人工ニューラルネットワーク研究で2024年にノーベル物理学賞を受賞されたヒントン教授(Geoffrey Hinton)が在籍されており、人工知能分野では、最先端の研究やディスカッションが行われています。私にとってこれ以上ない学びの場所のように思われました。実際入学後は、講義だけでなく、Formula Student Racing TeamやHCI研究室、ダイナミックグラフィックスプロジェクトラボ(DGP Lab)、AIのスタートアップ企業などを通して、多くの学びの機会がありました。またそれは、人間としても成長させてくれる環境であったことに大変感謝しています。
――日常生活、生活環境について
私の日常生活は、基本的に寮と図書館と教室のこの3つの場所に集中しています。大学3年目の平日のスケジュールは、このような感じです。
朝は、7時に起床して、早くて8時から夕方は通常18時、遅い時は、夜の21時まで学校の講義を受けます。空いた時間と放課後は、大学の図書館か寮の自室で勉強をします。食事を挟んで夜の12時まで勉強は続き、深夜1時に就寝につきます。テスト期間中や大きな課題の提出前などは、仕方なく時々徹夜をすることがあります。
日常生活において、長時間座ったままの姿勢でのパソコン作業が1日の大半を占めます。そのため、目を酷使し、体調不良につながりやすいので、短い時間でも空いた時間がとれた時は、カフェに行ったり、キャンパスの周りを散歩したり、昼寝をしたり、とにかく体を動かしたり、目を休息させることを心がけています。
そしてまたトロントは、夏が短く、冬がとても長い気候です。早い年には、10月から雪が降りはじめたりもします。12月から3月にかけては、氷点下の日が続き、室内にこもりがちにもなります。それなので、特に気分がダウンしがちな冬季は、お天気のいい日は、なるべく外に出て、少しでも太陽の光を浴びることを心がけて暮らしています。

――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること
大学の勉強の傍ら、時間があれば、研究とプロジェクトに情熱を注いでいます。人間とコンピューターの有形・無形の相互作用について考えたり、文献レビューから新しい研究課題を策定し、そのことを誰かと会話したりすることは、私にとって、いつも一番楽しい時間です。
そして、来学期は最終学年で、大学院への入試がある為、GPA(Grade Point Average)といった学校の成績評価を一定基準から落とすことができません。それなので、現在は、大学の勉強に集中し、バランスの良い時間配分で勉強に集中的に取り組むことを心がけています。苦手なことも多く、上手く出来なくて凹むこともありますが、必要以上に自分を責めないように気をつけています。出来ないことよりも、出来ることに集中し、あまり考えすぎないようにしています。たとえ思うような評価が得られなくても、努力が足りなかったというわけではないので、頑張った自分と方向性を再確認して、気持ちを切り替え、前に進むようにしています。勉強は、時に苦しくて、楽しいだけではないですけれど、私自身の夢の達成は、これら全ての延長線上にあることがわかっているので、そのことを忘れないようにしています。
――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負
現在、トロント大学のコンピュータサイエンス学部、Khai Truong教授のもと、チューリッヒ大学と共同でベビードップラー(妊娠中に胎児の心音を聴くことができる携帯型超音波装置)のユーザビリティ評価のプロジェクトに従事しています。センシング技術が出産前ケア体験をどのように向上させることができるかを探るためのHCIと母体の健康に関する研究を行っています。
また、これから先に挑戦したいことは、HCIの手法を取り入れた研究で、若い世代が直面している多くの問題に取り組みたいと思います。
2024年は、スタート地点での大きなミスがあり、とにかく悔しい思いをして、苦しい1年でした。改善するために一生懸命頑張ってきました。しかし、その苦い経験を経てメンタルの改善が大きく出来たと思うので、2025年は、これまで以上に学びの渇望を持って挑戦し、現状に安住することなく、強気の姿勢でいきたいと考えています。
この夏、22歳の誕生日を迎えるのですけれども、憧れていたTaylor Swiftの22の歌詞のように、ハッピーで自由で支離滅裂で、そして同時に孤独で悲惨だけれど、マジカルな自分を楽しみたいと決心しています。私の挑戦は、この先どうなるかわかりませんが、その過程を楽しむ1年に必ずしたいなと思っています。
