2024/07/16

関根崚人 卒業レポート

2024/07/16

関根崚人

関根 崚人 Ryoto Sekine

学部時代は、工学部(電気工学)と理学部(基礎物理)を掛け持ちし、卒業論文では、両分野の知識を活かして、量子コンピューターの研究(「固体量子ビット中の電子移動を妨げる現象の解明と防止方法」)をしています。博士課程進学後も、…

学術部門第48回生の関根崚人です。この度、カリフォルニア工科大学博士課程を卒業することになりました。今回のレポートでは、江副記念リクルート財団にご支援いただいた5年間の「光」の研究生活を振り返ってみたいと思います。

スマホやApple Watchの登場で、今やコンピュータ並みの演算装置が手のひらサイズで使える時代になりました。光で作動する光コンピュータが実現すれば、さらに高度なことができるのではないかと考えられていますが、実用化するためには、回路の小型化が必須です。そこで博士課程の5年間、「光集積回路の小型化」および実用化に必要な「光学非線形性」の研究に取り組んできました。非線形性は、従来のパソコンではトランジスタがその役目を果たしていました。それに代わる光学トランジスタを開発することによって、もともと卓球台2台分もの大きな台の上で操作していた光ネットワークを、指でつまめる程度の小さなチップ上に収めることに成功しました。この他にも光学スイッチなど、光コンピュータに必要なさまざまなパーツの開発も行い、最終的に、独自に開発したプラットフォームを用いて、光の特性を活かした新しいシステムを実際につくりました。従来のプロセッサと比較する実験も行い、特定分野においては優位となることが示せました。光コンピュータは、最適化問題やディープラーニングなどに必要な演算処理を高速に行うことが可能です。今後は、優位性を活かした特殊計算機の実現に挑戦していきます。

図1(a)光集積回路のイラスト(b)小型化に成功した自作デバイス(c)Nanophotonic PPLNの光学プラットフォームづくりの開発プロセス(卒論・発表から抜粋)

博士課程の最初の頃は、自分の研究に一人で黙々と取り組んでいましたが、研究が進めば進むほど一人でできる事には限界があり、チームワークが大切であると実感しました。研究生活を通して、ポスドクの先輩達を見習いながら徐々に自分からチームを作り、皆が面白いと思えるような研究プロジェクトを提案して、まとめ役をすることができるようになりました。また、学会などを通して、自分から他の研究者とのディスカッションの輪を広げ、他の研究室や外部機関との共同研究を提案するなど、以前の自分では考えられないくらい積極的に行動するようになりました。例えば、江副記念リクルート財団の面接がきっかけで、日本でのワークショップへ参加する機会に恵まれた時も、その後NTTの研究所を訪れ、Ising Machineの研究をしている方々ともディスカッションするなど、研究ネットワークを日本へも広げることができました。

研究内容紹介のトークの様子とリンク https://www.youtube.com/watch?v=KygmT13NiiQ

 

最後に、指導教官のMarandi先生はいつも「研究は仕事だからやるのではなく、面白いから夢中になり、いくらでもやりたくなるものだ」とおっしゃっています。まさに研究に明け暮れ、面白さに目覚めた5年間でした。もちろん、これは江副記念リクルート財団のご支援があってのことです。生活面のサポートをして頂いたおかげで、研究に打ち込める環境を整えることができました。次のステップでも、光を用いた次世代のコンピュータづくりを目指して、研究を続けていきます。これからもっともっと面白いフェーズに入ります。ご支援、本当にありがとうございました。