2022/04/12

財団交流イベント
第51回江副記念リクルート財団総会を開催しました

2022/04/12

当財団では、毎年総会を開催し、現役奨学生・OBOG・役員·選考委員らが一堂に会して成果報告や交流セッションなど多彩なコンテンツで交流を行っています。

今年も昨年に引き続きオンラインでの実施となりました。時差を考慮し午前の部・午後の部の二部構成で開催し、今年も世界で活躍する沢山の現役奨学生が集結。成果報告での質疑応答やディスカッション、小グループでのセッションなど活発な交流が見られ、充実したイベントとなりました。



午後の部では卒業報告や新規奨学生の紹介、成果報告をはじめ、パネルディスカッションや交流セッション、特別講演などコンテンツが盛りだくさんな総会となりました。質疑応答では分野を超えて様々な質問が飛び、チャットへも沢山の質問や感想が投稿されるなど、双方向で積極的に交流をはかろうとする財団生の姿がありました。

今年も沢山の方が参加しました。


◇開会挨拶(専務理事 鶴 宏明)
 
当財団の専務理事 鶴宏明より開会の挨拶をいたしました。コロナやウクライナなど不安定な情勢の中変わらぬ挑戦を続けている財団生への応援メッセージや、今後も変わらぬサポートを約束すると共に人との「つながり」を大事にしている財団の想いを伝えしました。

◇卒業報告 スポーツ部門43回生 山口 茜さん
卒業生を代表してスポーツ部門の山口茜さんに、卒業インタビューを実施。山口さんは約9年間財団に在籍し、在籍中にはリオ・東京と2大会連続でオリンピック出場。また昨年の世界選手権優勝をはじめ、現在は世界ランク2位と日本のバトミントン界を長く牽引し活躍しています。

当日上映した動画は事前に奨学生へインタビュアーを募集して作成。インタビュアーは46回生の塚田詠里中さん、48回生の筧路加さん。動画編集から記事作成まで担当しました。


2021年東京オリンピックでは、コロナ下という前代未聞の状況の中での開催となったため、大変な面もあったが試合ができる幸せを改めて感じたという山口さん。競技人生の中で大切にしている事として「楽しむこと」を挙げました。そして「勝負の世界なので結果が全てだが、現役生活を終えた後も競技を一生好きでいられるよう競技を楽しむ。その思いを日々大切にしている」と、バトミントンへの深い愛情を感じさせる言葉がありました。

スポーツ部門43回生 山口 茜さん

最後に「好きなことをやっていても辛いことはあるが、まわりの人のサポートに頼りながら楽しく活躍してください。」と財団生へ温かいアドバイスをくれました。
※卒業インタビュー記事はこちら

◇新規奨学生紹介
2022年からスポーツ部門の制度をリニューアルし、史上最年少12歳の奨学生が誕生するなど、今年も世界に挑戦する頼もしい新規奨学生が集結。やや緊張した表情の方もいましたが、皆さん力強くこれからの意気込みや取り組んでいるテーマなどを発表しました。

器楽2名、スポーツ7名、アート2名、学術8名、合計19名の学生が採用されました。

◇パネルディスカッション(学術部門:45回生 川北 源二さん、47回 生 石田 秀さん、50回生 中村 勇人さん)

当日パネリストとしてディスカッションしてくれた3名


今回は、3名の学生が「20XX年 研究者が目指す社会の姿」というテーマに対して「機械に意識は宿るのか、そもそも意識・自由意志とは」「20xx年、スポーツ・音楽・アートはどうなっているか」といった切り口でディスカッションをしました。

学術部門47回 生 石田 秀さん

現在様々な場所で可能性が広がっている人工知能。社会に与える影響を議論する上で、常についてまわる疑問「ロボットは意識を持つようになるのか」について、「そもそも意識・自由意志とは」という点から議論はスタート。そもそも意識を宿している状態、自由意志で動くことができている状態とはどういった状態なのか?人間である私たちが自由意志を持っているのか?責任とは?といった様々な視点から議論しました。

学術部門50回生 中村 勇人さん

続いて、人体の動作を拡張していくような研究や、テクノロジーとスポーツを掛け合わせ、採集した膨大なデータから最適な動きを分析する研究など様々な分野とテクノロジーが掛け合わされることで広がりを見せる最新の研究を紹介しました。

学術部門45回生 川北 源二さん

他の方の発言や主張を聞き、次々と発展していくディスカッション。部門の垣根を越えて多くの学生から質疑があり、活発な議論が展開されました。開催後のアンケートからも「大変興味深い内容だった」といった声や、議論に対する自身の考えがよせられるなど、多くの財団生の好奇心を刺激したテーマだったようです。

◇奨学生交流セッション
午前の部同様に、午後の部でもいくつかのルームに分かれて、「この一年間で挑戦したいこと」をテーマに交流セッションが行われました。後日アンケートやレポートなどでは「皆さんのお話を聞いて、自分も頑張ろうと思った」「他の方のお話は新鮮で刺激を受けました」といった嬉しい声がありました。

◇奨学生成果報告①器楽部門44回生 桑原 志織さん

続いて桑原さんの成果報告では、桑原さんの紹介ムービーして動画を上映しました。この動画は今回財団初の試みとして作成された、奨学生の紹介ムービーです。

桑原さんは東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻に進学し首席で卒業。184月より、ベルリン芸術大学で学んでいます。また、2021年に行われたルービンシュタイン国際ピアノコンクールでは2位に入賞するなど活躍中。

動画では、世界情勢が不安定な中「音楽を奏でるとは自分にとってどういう意味をもっているのか」「ピアノという楽器の魅力」など語ってくれました。イスラエルに演奏へ行った際、パレスチナ問題が悪化している状態だったため、現地では夜中警戒サイレンが鳴り地下防空壕へ隠れることが必要な状態だったそうです。直前までキャンセルしようかと迷いがありながらも迎えた本番。ステージに上がると大きな会場には満席のお客様が・・・。どんな状況にも音楽が必要とされていることや人々に訴えかける力が音楽にはある、そう確信した経験だったという言葉に、胸が熱くなった財団生も多かったのではないでしょうか。

動画の最後には、音楽を通して社会貢献にも挑戦していきたいと、これからの展望も話しました。上映後は本人が登場し、インタビュー形式で質問に回答。桑原さんの挑戦を続ける姿や言葉に、皆さん真剣な表情で聞き入っているようでした。

◇奨学生成果報告 ②器楽部門45・48回生 小林 海都さん
続いての成果発表はインタビュー形式で小林さんが登場。小林さんは上野学園高等学校音楽科演奏家コース卒業後、ベルギーのエリザベート王妃音楽院を経て、現在はスイスのバーゼル音楽院で学んでいます。直近では2021年にイギリスで行われたリーズ国際ピアノコンクールにて46年ぶりに日本人歴代最高位の2位および最優秀室内楽演奏賞を受賞しています。

インタビューでは、若きピアニストの登竜門として有名な「リーズ国際ピアノコンクールについて」や「ピアノを始めたきっかけ、ピアニストとして活動していくことを決断したタイミング」「コンクール等で、本番にどのように合わせていくか」といった質問に回答しました。

器楽部門45・48回生 小林 海都さん

ピアノ以外にも合唱団に所属するなど小さなころから音楽に慣れ親しんできたというご自身のルーツや、コンクールの予選ではコロナの影響で一発録音の音源で行われたといった裏話など沢山のエピソードを惜しみなく披露。

また、予選通過が決まった時点で次の課題曲が発表されるという限られた時間で気持ちや演奏を仕上げていくための工夫については、その日どのくらい練習をするのか紙に明確に書き出してみるといったことや、ピアノを練習する事と同じくらいピアノを触らず頭でイメージする時間を作るといった日々の工夫を伝えました。

また、事前アンケートでも多く挙がっていた本番の緊張対策に対しては、「緊張していてもその瞬間を楽しむようにしている。素晴らしい作曲家が作ってくれた曲、演奏するその瞬間を大切に紡いでいくことを意識している」とアドバイス。小林さんの作曲家への尊敬の念や、いつでも音楽を楽しもうとする素敵な姿勢が感じられるインタビューとなりました。

◇奨学生成果報告③アート部門49回生 小林 颯さん
成果報告3人目はアート部門の小林さんが登場。小林さんは現在、ベルリン芸術大学大学院アートアンドメディアに在籍しています。昨年の文化庁メディア芸術祭アート部門新人賞受賞をはじめ、今年もForbes Japan Under30に選出されるなど活躍が注目されている財団生の一人です。自作の装置や映像を使った創作活動をしていて、当日はコロナ下の日本や海外の状況から起草した2つの作品を映像で紹介しました。

アート部門49回生小林さん

一つ目は「Condensed Coffee」 という作品。小林さんは留学が始まったころ、リモートで日本に居ながら留学生活がスタート。そこでベルリンと東京とのコロナ対策との違いから、東京の密にこだわる対策について感じた違和感を作品にしました。渋谷スクランブル交差点の映像とコーヒーマシーンの映像とが交互に映し出される作品で、コンデンスミルクの水滴が渋谷交差点の人通りと連動するなど興味深い切り口で密を表現する作品に、質疑応答やアンケートでは様々な意見や感想がよせられました。

一つ目の作品:Condensed Coffee

二つ目は「134万人の口へ」という作成中の作品。2021年頭、コロナのため在外邦人向けに帰国が一時停止した出来事がきっかけで制作された作品です。在外邦人に捧げるマスクと詩を作るというこの作品。今の在外邦人の姿を記録し、それを国内の人が見てもらうことで少しでも国の外を想像する時間を作れないかという思いで制作したとのこと。

二つ目は「134万人の口へ」

チャットや口頭でも沢山の意見や感想が集まり、その一つ一つに丁寧に回答した小林さん。これからも現実と関係するための手段として映像を作っていきたいという楽しみな一言も。幻想的な映像と共に、想像力をかきたてる言葉を紡ぎ、発せられる詩。作品を見る者をひきつける不思議な魅力を感じさせる作品でした。制作された作品はこちらからご覧いただけます。

 

◇特別講演「世界で活躍する選手に共通するものとは」理事 村井 満氏

当財団理事・日本プロサッカーリーグ名誉会員 村井 満氏は早稲田大学卒業後、日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。同社執行役員、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)社長などを歴任。2014年1月からは初のビジネス界出身者として第5代Jリーグチェアマンに抜擢。規約上の最長任期である4期8年の間チェアマンを務め、2022年3月15日にご退任。同日付で日本プロサッカーリーグの名誉会員に選任。

特別講演では、世界で活躍するサッカー選手の姿を見続けてきた村井氏に「世界で活躍する選手に共通するものとは」というテーマでお話いただきました。

世界で活躍する選手には二つの力が備わっているという核心から講演は始まります。一つ目は人の話を聞く「傾聴力」。そして二つ目は聞くというものと対局にある「主張する力」、自分の意見を言う力。この二つを導き出すためにご自身で過去10年間分のJリーグ全選手プロファイルを徹底的に調べあげたとのことでした。当初は、並外れた足技などの身体能力の高さや、人並み以上の闘争心といったメンタルが必要であると仮説を立てていたそうですが、実際に調べてみるとそれに相関は見られず、世界で活躍する選手に共通していた力で相関が見られたのはこの「傾聴力」と「主張力」だったそうです。

この理由に対し、サッカーというスポーツがとても理不尽なスポーツであるからこそ、この能力が必要であったと説明してくださいました。また、選手達の実際の傾聴力や主張力とはどういったものか、選手たちとのエピソードも交えて紹介。中でも、「世界一流の選手や監督でさえ、極度の緊張状態にある時は心が折れてしまいそうになる時がある。そういった心をリペアしながら日々戦っている」という言葉に、多くの財団生が勇気づけられたのではないでしょうか。熱いエールと共に、分野を超えて世界を目指す人に必要なものとは何かを語ってくださいました。

◇理事長挨拶 全文はこちら

当財団の理事長 峰岸真澄よりご挨拶をいたしました。活躍する奨学生を称えると共に、コロナやウクライナの情勢において、会長をつとめるリクルートホールディングスがどのように行動しているのか、これからどういった支援をしていきたいのかといった方向性や考えをお伝えしました。そして、最後には、今後も奨学生が今すべきことに集中できるように様々な面でサポートをしていきたいというメッセージを送り総会は閉会となりました。


2020年、2021年に続きオンライン開催3回目となった今回。事後アンケートでは「発表を聞いて、自分も頑張ろうと思った」「違う分野の方々との交流は新鮮で刺激を受けました。」といった嬉しい声を多数いただきました。

分野を超えての交流セッションやパネルディスカッションなど、双方向での活発な交流が行われ大いに盛り上がりを見せた今回。分野を超えて主体的に交流を楽しむ財団生の姿が多く見られました。事務局としても、引き続き皆さんの学びや成果が最大限発揮できるように、様々な支援をしていきたいと思います。