『びゅー VIEW ビュー』展 キュレーター高校生 誕生秘話
「キュレーター高校生」は『びゅー VIEW ビュー』展の「もうひとつの作品」と言っても良いかもしれません。本企画の要は、第一線で活躍するアーティストを高校生がキュレーションをするという「先が見えない面白さ」でした。私たち実行委員メンバーは、実体のなかった「キュレーター高校生」という言葉だけを先に決定し、ひっそりとTwitterで「キュレーター高校生」を募集する事からはじめました。
募集当時、世の中はキュレーションサイト大炎上事件がニュースで報じられていた最中で、「キュレーター」という言葉を社会がマイナスイメージだけで捉えたりはしないか…? という不安の中での進行でした。何とか体裁が整った書類審査と面接を経て、無事に6名のキュレーター高校生が誕生し、アーティスト・専門家・キュレーター高校生が3つのテーマ(ローカルなグローバル、心理学、実験中!、人生100年時代)に分かれて議論・フィールドワーク・プレゼンテーションを重ねていくうちに、少しずつですが「キュレーター高校生」という言葉に、実体が伴ってきたのです。
この企画の実行委員長である私は、ライフワークとして「ソーシャルデザイン論」という社会課題に着目したデザイン手法と考え方を、デザイナーを目指す若者たちや、ビジネスとデザインを通して社会を変えたいと考える方々に伝えています。ソーシャルデザインの世界では、多角的な(例えば、デザイナー x 医者 x 患者の組合せ)対話の場を設け、課題を定義し、解決へと導いた事例が世界中に数多く存在します。本企画はソーシャルデザインの重要な特徴でもある、多角的な対話と思考の場づくりが、根底にありました。
本企画の専門家たちは、高齢社会や難民問題などの重く複雑な社会状況を、どうすれば多くの方々に前向きに捉えて頂き、共に考える機会を提供できるか、という課題を常々抱えていました。例えば、リサーチで得られた数字や論文を発信するだけでは「伝わる力」や「共感を得る力」が弱く、もしアートというかたちで社会課題を伝える、感じてもらうことができたら、もっと多くの人たちが今の社会状況に関心を持ってくれるのではないか? と期待していたのです。また、これだけ複雑化している社会で、改めて問題を定義しなすことも、必要としていました。ここにも、アートへの期待があります。
アートはデザインと違い、課題解決を目的としていません。デザインは解(かい)ですが、アートは問(とい)と言われます。この『びゅー VIEW ビュー』展で展示されているアート作品は、私たちの社会とその未来を問う力になるでしょう。それだけでなく、キュレーター高校生の存在そのものも、重要な問う力なのだと考えています。
鑑賞者の皆様が、本展のアート作品とキュレーター高校生を通じて「未来の社会」を前向きに、自分ごととして捉えるきっかけとなれば、企画をスタートさせた私たち実行委員会メンバーも、大変嬉しく思います。『びゅー VIEW ビュー』展で6名のキュレーター高校生たちとお待ちしております。ぜひ、ワクワクする未来社会への問いを、一緒に考えましょう。
江副記念財団45周年記念事業実行委員会 委員長
田中美帆 @tanaka_cocoroe