人間的なところを、写真を通して拝見したい

佐々木加奈子インタビュー by キュレーター高校生

びゅー VIEW ビュー展「ローカルなグローバル」を担当するアーティストは、佐々木加奈子さんです。土地の記憶や人々の物語に着目し、主に写真や映像作品として国内外で制作・発表しています。近年では浪江の記憶を守る会を設立し、アーカイブ活動も行なっている佐々木さんですが、今回の作品作りについて、キュレーター高校生からインタビューしました。

佐々木加奈子(フォトグラファー) x  栗田理恵子(キュレーター高校生)

――本企画に参加しようと思った理由をお聞かせください。

高校生と一緒に作品作れるという事で、今までやったことのないなと思い、是非参加したいと思いました。

――高校生がキュレーションをするということはどう思いましたか。

最初聞いた時は、高校生がキュレーションはどんなオーダーが来るのかなと興味津々でした。そこが参加したいなって思ったきっかけです。高校生らしい発想が自分にも良い影響を与えてくれるかなって。
それに、財団にお世話になったので、恩返しもしたいなと。

――スペシャリストと一緒に進めることで、何か心境の変化などがありましたか?

はい。ざっくり言うと、テーマは国際社会ということで、スペシャリストの方達は実際現場で本当に違う国でお仕事としてやっている事を聞いたり、森田さんは特にブラジルに住まれてそこで仕事されていたので、細かい文化の事などや行政関係のシビアな事とか、聞けました。また、私は今迄自分に出来る範囲でしか自分の責任でしかやってなかったから、結果を残すっていう面のスペシャリストの重みとか責任とか、勉強になると毎回感じていました。

――写真を撮り終えた感想は如何ですか?

全部は撮り終えて・・まだちょっとあるかもしれませんが、そうですね。

凄く協力して貰って良い環境で撮れたと思っています。まだ写真も見てなくてどんな感じかわからないですが。

――印象に残った人などいましたか?

ああ!いた。高校生で何人か。彼らは凄い結構積極的に楽しんで一緒に撮れました。本当は制服着ないといけないけれど、わざわざ着たい服を持って来てくれて。結構皆シャイなのかなと思ったけれど、積極的にシャイだけども参加したいという気持ち。だんだんリラックスして一人一人撮る事が出来たので、色々な制限はあったけれど、どんな写真が撮れているか楽しみです。

――ちゃんと服も考えて??

うんうん。そうですね。もっとちゃんと一人一人時間取れたら良かったなと思っています。時間制限があったので。

――なぜ子供や大人、年配の方でなく、高校生という年代にフォーカスしたのですか?

それは、この企画の趣旨もあるけれど、やはり、これからの若者の今のあり方を表現できたらと思ったのです。

――ショートストーリーのモデルはどうやって決めますか?

モデル?それはまだ模索中だけど、その対象者は一応オープンにしていて、老若男女というか、高校生だけではなくて、むしろその学生についている両親やおじいちゃん世代の人たちの物語や歴史や情報、インスピレーションを素材としたいなという感じです。それを収集しながら考えて、組み立てたいなと思っています。

――実話にフィクションを混ぜる理由は何ですか?

あまり現実味というか、現実味はある事はあるけれども、これが本当か本当ではないか、それが問題ではなくしたいので、もう少し違う次元ですんなり物語として入ってくる、オーディエンスが感じられるためには、本当か本当じゃないとかあまり関係がない。

それを聞いた事がインスピレーションになって皆のものが混ざる感じのイメージかな。わざわざねじ曲げるわけではないのだけど、オーディエンスがいろいろ想像して貰う仕掛けとして、大げさにすることや、手を加える必要がある。それは多分映画を作るとか何でもそうだと思う。小説にしても。

――今まで深く話を聞けたのは、まだ高校生達ですか?

高校生に話聞いたけど、あまり出てこなかった。けれどそれは、多分普通だと思うし、短い時間だったからなかなか難しい。でも今日も森田さん(スペシャリスト)と歩いていて、たわいも無い日常の雰囲気を解釈して感じる事が大事なのかなあと思ってます。今は、そういうことを吸収しているのかもしれません。

――話を聞いて写真を撮るという事ですが、この人の写真を撮りたいって思う瞬間とはどういう時ですか?

そうですね、この人たちは多分何か思っているであろう、何か募っているんだろうということ。そういった人間的なところに私は魅力を感じて、惹きつけられるので。それが聞きたいという事だけではなく、写真を撮る事で交流というか、恩着せがましいかもしれないけれど、写真を通して拝見したいという想いがあるのかな。言葉に出すこと、表すのが難しい(笑)

――何となくこう感じるものがあって・・

多分その、人ですよ。今回の高校生もそれぞれ違う雰囲気を持っていて、だいたい若い人は写真を撮る時にポーズ作ったりしがちだけど、一旦それを崩して、最初撮影するまでに一回質問シートを書いてもらう。それはすごく簡単な質問。

――どんな質問があったのですか。

「日本にどれ位居るか?」とか基本的なこと。「将来どういう夢を持っているか?」とか。「恋しているか?」とか。その質問は「お前してるだろう〜」とかそんな雰囲気だった(笑)

当日写真撮る時も一対一、通訳してくれた人も居たけど、その時した質問は、「最近嬉しかった事」「嫌だった事」あとは「将来どこでなにしているか」突拍子もない質問だったけれど、どんな事を考えているのかなということを探るきっかけとして、それを聞きながら写真を撮ったので、その間で見せる表情とか、その中でも私は強引に、あっち向いてだとか、こうやってだとか、駆け引きみたいな感じかなあ。

――高校生たちはインタビューの内容、聞かれた事にすぐ答えてくれましたか?

うん。だいたいみんな。素直。

――聞いて欲しく無い・・みたいなのは

全然。

――恋愛事情とかって他人に言う話じゃないみたいな・・。

結構みんなオープンだった。この人前俺が付き合っていたとか、小さいコミュニティのようだから。クラス同士で、カップル、カップルを撮った。ずっと一緒にいるからさ(笑)

――じゃあ積極的な。

うん。協力して貰ったって実感です。

こちらから質問で、栗田さんもこれまで同じく大泉町で製作した経験もあると思いますが、キュレーターとして、そして作家の過去があるとして私の制作過程を見て何か感じる事はありますか?

――そうですね。私が取材した時も大泉の人は、拒否しないで聞いた事に色々なこと話してくれたので、大泉町の人の協力してくれる姿勢は、何でしょうか協力してくれるっていうことに凄く嬉しいなって思っています。私は動画を撮っていて、佐々木さんは写真を撮っているっていうカメラの共通点が、なんか親近感じゃないけれど、カメラっていうものを使ってアート製作をするのが凄くいいなって感じています。

――あと、写真を撮る前に色々調べている佐々木さんの作品づくりのプロセスが凄く濃厚だなって思っています。ブラジルにある神話とか言い伝えのお話、昔話みたいなのがあるのかな?調べてみます、って言っていた時、作品づくりのためのリサーチとかが凄いなあって思ったのがあります。

言っただけかも(笑)調べてみましたけどね・・

――そういうところからもアイディアが来ると思って。私は元々アートが好きですがそういうアーティストの作品づくりのプロセスを見ると、将来アートやりたいなあっていう気持ちが、生まれました。ずっと将来の夢がぱっとしなかったのですが、今凄いキュレーター、アーティストもいいけれど、アーティストの活動を見る事ができる、という仕事もいいなと思うきっかけでした。

ぜひ聞き取りに来てください。

――明日は?

うん。明日も。

撮影は10時から。学校だもんね(笑)

(おまけ)「ローカルなグローバル」のスペシャリストの1人、森田さんはブラジルと関係が深く、大泉町には以前から訪問をしています。今回も、取材の途中でブラジルでお世話になった人に大泉町で再会する、といったこともありました。そんな森田さんにも、お話してもらいました。

森田千春(国際協力機構 JICA) x  栗田理恵子(キュレーター高校生)

――元々大泉町を知っていてプラジルとも関係が深い森田さんですが、大泉町に来て新しく感じた事とか、懐かしく思う事はありましたか?

はい。私は最初に大泉町に来たのが1991年だったのですが、その時は沢山プラジル人が来始めて盛り上がっている感じ、新しい事が始まろうとしている、行政も、どうしようどうしようみたいな感じで、盛り上げ始めた時でした。その後も10年後に一回来ました。

ポンデケージョ posted by ©tomoyui

今回来てみると20年以上経っていて、どんどんブラジル人とか他の国の人たちが作ったお店だとか、色々なものが、来たというだけでなく、そこから新しく生まれているようなものがありますね。それに対して日本人も、もともと居た人も美味しいなと思ってポンデケージョを食べにきているとか、地域の一部に本当に溶け込んだな、という部分もあります。

反面、溶け込んだというよりは、ブラジルに日本人移民たちのコロニア、移住地があるように、この人たちの中でのネットワークで、色んな情報網があったり、凄く結びついたっていうか、ネットワークの層が相当厚くなったような気はします。人は大分出てしまいましたとは言っているのですが、サンパウロのリベルダージも日本人は少なくなっていて、今は韓国人が殆どだといいつつも移住者のコミュニティを凄く持っている、そんな感じかなと思いますね。

――ブラジル料理のお店とかに行くと、いつも森田さんがこれは・・

思い出を語っている?(笑)

――はい!印象が強かったので、私たちが何も知らないところを森田さんは知っているんだなあといつも思っていました。

たまたまね、縁のある文化がここには多くあるからっていうのもあるのですが、今日もモコトー(参考記事)ってスープを佐々木さんと食べたのですが、凄く久しぶり、ブラジル料理って言ってもあのスープがあるところは本当珍しいので、ああ!あるなと思って発見、という感じだったし。

あとは今クリスマスシーズンですが、ブラジルでは、いわゆるデコレーションのイチゴケーキみたいなのは食べなくて、パネトーニっていうケーキというかパンケーキですね、それを食べます。イタリア文化とは聞いていますが、それがお店にばーっとある感じもブラジルのこのシーズンそっくりで、積み方とか見せ方ぱーっと懐かしい感じがしますね。

――懐かしさも新しさもある大泉町だったなっていう感じですね。あと、ポルトガル語だと素直な話が聞けたような気がするって思った人は居ましたか?今まで。

そうですね。今日話したそのモコトースープのお店の男性もそうでしたし。

――どんなお話ですか?世間話ですか?

うん。そのスープの作り方をまず凄く煮込まないといけないし、手間のかかるスープだからなかなか出す店は無いだよねって話とか、どこまで仕込むか、何時から夕方まで煮込んで、次の日も何時から煮込んでみたいな話、ブラジルでも店をやっているんだとか。

――私達が大泉町で活動する時に、森田さんが通訳してくれたのがスムーズにお話聞けたりできたので凄く助かりました。

逆に言うと私は大泉って日本にずっと長くある町だから、みんな日本語が出来ていて、ポルトガル語じゃないと通じないって人は殆ど居ないのではないかって思っていたので、今回来てみて、最近来たので話せませんという人も実際今日も会ったし、ああそうなのかと。まだ日本語できます!という人ばかりじゃないのだなあと、ちょっと意外な感じはしました。

――日本語がまだ苦手だから教会とかに集まっている人もいたので、私もそれは感じました。

ブラジルにある日系社会も同じような感じで、何十年50年住んでいても、そのコミュニティの中では日本語だけで通じるから全然ポルトガル語話さないおばあちゃんとか、おじいちゃんとかも居るので、ああそれのこっち版と考えると、そうそうそう・・そうだな。とか思いますね。