作った上で、そこから違うものが開いてくると思う- 成田久(2)

アーティストインタビュー by キュレーター高校生

びゅー VIEW ビュー展「人生100年時代」を担当するアーティストは、成田久さん。前半は、成田さんのアーティストとしての人となりを伺いましたが、後半は、今回のテーマや社会問題を扱うことへの思いや、作品の状況について伺います。

インタビューされた人:成田久(通称キューさん)
インタビューした人:緒方希・武田真由子・三枝響子(キュレーター高校生)、関芙佐子(スペシャリスト・通称ちゃこさん)、菅沼比呂志(アドバイザー)

――この企画に参加しようと思った理由をお願いします。

参加してって言われたから(笑)うそです!

参加して頂きたいって熱烈なオファーが来まして、僕も社会問題というのがもちろん面白いなって思ったんですけど、それよりも高校生と何かするっていのは、すごく新しくて、今までなかったことだから、どういうことになるのかわかんないけど面白そうだなと思って…参加を表明しました。

――高校生がキュレーションすることに対する考えをどう思いますか?

うーん、どういうことになるかが分からないけど、まあ初めてのことだし、やってみたら?って感じかな。

なんかわかんないことは大人に聞けばいいし、こうしてみたいってことも言ってもいいから、もっと自由に考えてもいいんじゃないかな。
皆初めてのことだから、自分なりに考えて、解釈してやっていけばいいんじゃないかなあと。

――人生百年時代についていろいろ学んで、どんな心境の変化がありましたか?

ご老人をよく見るようになった!(笑)

――長生きしたいですか?

長生きしたい!死にたくない!

一同:(笑)

――今回、100年生きることを前提にして話を進めてきましたが、もし100年生きられなかったらどうしますか?今でこそ100年生きられるようになってるけど、50年前だったら60までしか生きられなかったかもしれないし、100年前だったら40だったかもしれない。

うーん…。僕の性格で、その時々を一生懸命やろうって思って生きちゃうから、多分短くても濃くはやってるかも。でも今、50歳になるときに、「さてさてちょっと、もうちょっとできることは何かな」と考えなくちゃいけないのかな、とは何となく思ってる。

――人生100年時代というテーマの、どういう所が印象に残っていますか?

やっぱり、いっぱい長生きしちゃうよっていうところとか、生きることに対する社会設計が変わってきたところとかかなあ。あとは、自分がクリエイションをするときに、正直、社会問題を深く考えて作るということが今までなかったので、そのことに気づいたこと自体が重要だったかなあ。すごく良い経験になったと思います。

――ところで、作品の進行状況は…。

作品ね、まずは素材を買った。布屋さんで大量に。手が痛い。
広げたときの大きさが怖い。驚愕しそう…。

――何枚くらいですか?

百枚。

――百枚!?すごい…。一枚一枚選んだんですか?

そうですよ。でも選ぶの早いから。
問屋さんももう僕のこと知ってるからさ、「これいりますか?」って(笑)
問屋さんっていうか、布問屋さん?日暮里って繊維街なんですよ。ファッション系の学生、おばさま、外国人がメッチャ多いですよ。安いと百円から買えます。面白いですよ。

――いつもそこで布を買ってるんですか?

だいたいそこ。ほぼそこかなあ。

――ちなみになんていうお店ですか?

トマト。(笑)
トマト行くと、コンセプト考えて今日こういう布買いに行こうってなるんだけど、布ってすごく、流行り廃りもあるから、なくなっちゃうのね。フルーツ柄が流行ったときは一瞬で流行っちゃうけど、そのあとなかったりとか。
だから買いに行くときも、その布を買おうって行くんだけど、違う布を見て、素材としてストックしたりします。結局使わないんだけどね。

――今回の作品作りで、苦労していることや悩んでいることは何ですか?

リアルなことを言うと、あの布を一回どこで広げればいいんだろうってちょっと思ってる。でもそう悩んではいないですね。むしろ楽しみだから悩んではいないです。

――悩んだ時期はありましたか?

悩むというよりかは、どれを選ぼうかな、と。作る作品を、どれにしようかな、みたいなのはあったけど、何となくはやっぱり、これがやりたいな、っていうのはあったので。何だろう、そんなに「アーーーっ!!」ってことはないなあ。

――悩んでいた時期はいつごろですか?

悩んでいたというよりは、どう言う方向性にみんな思ってるかなあ、というのはありましたね。アイデアがいっぱいあったから、どこを深くしていこうかな、みたいな。

――今の考えになったのは、夏くらい?

いや?ちゃこさんと出会ってからはそういう妄想はもう入ってたから、ご老人のことを考えながら毎日妄想していたのもすごく面白いし、ジムに行ってもこういう人たちが走ってて、電気ついたら面白いな、とか。いつもお題がでている間に色々考えるので、考えるのは苦ではなく、一個しかできないから、どれにしようかな、みたいな。そういう悩みはありますね。

――今まで100年時代や、高齢者と聞いてイメージしていたものと、違ったところはありますか?

自分が年齢で区切られることがあんまり分かってないから、社会的にそういう風になってるっていうことに気づかせてくれて、まずよかったのかなと。
全然最初は、そういうことさえ考えてなったから…。社会問題というより、自分の妄想を考えてるから、社会問題をテーマにして作品をつくるのがはじめてのことだったので、作った上で、僕はそれで終わらせたい訳ではなくて、そこから違うものが開いてくると思うので、そうやって膨らんでいくコミュニケーションというのにすごく興味がある。財団が今回の企画をやってるんだけど、そこで終わらせるつもりはなくて、その後に広がってくことの方が面白いと思う。そこからもしかしたら、本当に社会政治のほうまでいきたいなあ、と勝手に思ってる。

やっぱりこう、楽しい方に持っていきたい。僕もそうですけど、お年を召している人に負のイメージっていうのは抱いていないので。お年を召している人がみんな疲れてるってわけじゃないから、自分もそうなるために今頑張ってるって感じかなあ。
こういう人がいれば、もっと楽しいんじゃない?みたいな。

――そう、自分もそういう人になっていきたいし、そういう社会を作りたいというか、示したいというか。

「いいの一人で変なジジイやるから!」みたいな(笑)
なんか、体力的には色んなことができなくなるかもしれないけど、脳がすごい元気で、体力ではできない、蓄積されたセンスを持ってる方もいらっしゃるから、そういうのをどうにか利用できないかなあ、と思ってる。そういう体力と、蓄積されたものの反比例みたいなのが、どうにかならないのかなあ、とか思っちゃう。ステキなクリエイターさんとかが年齢で辞めていくいうのが、ちょっとなんというか、もったいないというか…そういう感じはありましたね。そんな新人よりこの人のほうがいい!って(笑)

――そういう意味では、日常としては身近にあったけど、そんなに、人生100年時代って言うものに関心がなかった?

正直、社会問題に対しての興味がなかったというか。いつも自分の中に考えるテーマがあったから。

――遠いところでなんか起きてるな、みたいな感じですか?

そう、まずそこに美しいものを作らなきゃ、っていうところからはじまっちゃってたので。ただ、今回だったら100年のお題が出てるけど、もし違う学者さんに違うテーマで作ってって言われても面白いと思うかなと。

――キューちゃんって今までも文章も書いてるし、きれいなものを作ってるだけではなく、けっこういろんなことを考えて作っていたから、社会問題に関心があるのかなっていうイメージがあった。

なんか、物事を語れって言われたら語りますね。語るのも好き。

――だから、そういう社会の中にある問題を、アートの力でなんらかを変えようとしたり、見せたいって言う気持ちは元々あったのかなあと。

テーマがあれば何でも面白いと思いますけどね。美学というか。今回はそこにそれがあったので、自分の深みが増すって言うのじゃないけど、それがないと今回のテーマにはならないと思ったから。

――もしかすると、今までの美しいものを作っていた、もともとキューちゃんが持っていたものに、新たな面白い一面が切り開かれる作品になるかもしれないと。

そうですね。そうじゃないといけないかなとも思ってます。たぶん僕の作品の中で一番大きい作品になるんじゃないかな…。怖!(笑)まあ終わんなかったらそれはそれで面白いけどね。100年続く(笑)

――一緒にやりましょう(笑)

おまけ:寿命、欲しいですか?

関:全然関係ないんですけど、何か賞をとったり…良いことをしたりして、ご褒美として寿命がもらえるとしたら、もらいますか?何歳くらいもらいたいかということを皆に聞いてみたいと考えていて。

成田:おもしろい!

関:そしたら、響子ちゃんたち高校生はそんなに寿命いらないかもって答えて。もう少し歳をとったら九十、百くらいまでっていう人が出てくるんじゃないかなと。私も寿命欲しいと思う(笑)我々の世代が寿命欲しいっていう…(笑)

成田:それ、どうして?

関:ふしぎ…。

菅沼:それ多分ね、楽しいこと一杯やってる人と、まだ自由になれてない人の違い?

関:年齢によってその違いがあるかもしれないと思って、そうだとしたら、ちょっとそれ凄いな、と。え~寿命ほしくないの~?みたいな…。

成田:この頭で十代になったら、そりゃ嬉しいけどね。経験とか全部知った上で十代とか。

菅沼:俺ね、社会に出てからの方が良いなあ。お金が無い時とかいろいろできなかったから。

成田:え、もちろんですよ(笑)だから、今のいろんなものを持った上で十代とか(笑)

一同:(笑)

菅沼:いやお金は持ってけないもんなぁ。十代に。自分の自由になんない。…まあいいや。

成田:いやいやいや(笑)それで行くと僕学生の頃になんか戻りたくないもん。全然。
高校生とか特にイヤ。

一同:(笑)

菅沼:いや~、高校時代は嫌だったね~。ルールにこう縛られてさ。

関:私は結構自由だったから。楽しかった。

成田:僕はこう逆に、ぼやっとしてる子達と一緒にいるのが嫌だった。

――なるほど…。

成田:なんか「頑張ってることがダルい」感じが超キライ。
特に男子に妬まれてたし。色んな女の子と喋ってたから。よく呼び出されてた(笑)

――ええー!?(笑)

成田:「こいつ小物だなぁ~」とか思ってた。じゃあ自分で喋ればいいじゃん!って。
「付き合ってんの?」とかよく聞かれて。誰とも付き合ってないよ!みたいな。

――やっぱりモテモテなんですね。

成田:モテモテじゃないよ!普通に喋ってるだけだよ!

一同:(笑)

テーマの一つが、「人生100年時代」。

100歳まで生きる時代を迎え、あなたはどう人生を設計しますか。何歳まで働きますか? 年金や貯蓄は充分そうですか? 不安も多いものの、長寿は人類の長年の夢です。これまでにない長寿社会、十人十色の人生をどう生きるか、どうお互いを支え合い、どう優しい社会を実現していけば良いか。みんなで考えます。

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